中高生が古紙回収を担当!?――ドイツの古紙収集システム松田雅央の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年02月03日 07時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

自治体の委託

 さて、こうして収集された古紙は分別作業場で「上質紙」「ダンボール」「新聞・雑誌・そのほかの紙」に分類され、圧縮・梱包(こんぽう)の後、製紙業者に売却される。そしてその収益の一部が市民団体へと支払われる。

搬送を待つダンボールの塊

 各当事者のメリットは以下の通りだ。

市民:無料で古紙を処分できる

市民団体:活動資金を得られる

業者:人件費を抑えられる

自治体:コストが削減できる

 すべての当事者にいいこと尽くめではあるが、古紙取引価格は変動が激しく、これが時として問題を生む。2008年に一時1トン当たり80ユーロまで高騰した取引価格は、世界的な景気後退により25ユーロまで下落してしまった(アジア向けの古紙輸出減少が主な原因)。取引価格が採算ラインを割れば業者は収集を止めざるを得ないから、そのままではシステムが行き詰まってしまう。

 そこで、古紙の取引価格が採算ラインを割った場合には自治体が市民団体に対して補助金を支払い、その一部を収集分別業者に還元する仕組みになっている。それでも自治体にとっては古紙収集のための人員を雇うよりはコスト削減になるという。なお、インターネットを通じて回収日時の情報を市民に提供するのも自治体の役目である。

古紙収集の仕組み

大手業者の参入

 これは市清掃局の担当者から聞いた話だが、古紙価格が高騰していたころ、大手のゴミ収集業者が古紙収集事業参入を計画していたそうだ。そうなると、既存の古紙収集システムは古紙不足から立ち行かなくなり、システム自体が崩れてしまうかもしれない。

 市民団体と収集分別業者も困るが、これは自治体にとっても由々しき問題だ。もし古紙の取引価格が下落すれば大手業者は一転して古紙収集から手を引き、結局、自治体の責任において収集しなければならなくなる。かといって自治体が大手業者の参入を拒む法的根拠はなく困っていたそうだが、そうこうしているうちに古紙取引価格が下落し計画は流れたようだ。ゴミ収集事業が一企業の都合に振り回されてはならないのは当然。参入するにしても、大手業者が自治体と契約を結び、リスクと責任を負うようなルールが必要となるだろう。

 現在の古紙収集は市民団体・企業・自治体の協働作業の一例である。(バイトの子どもたちは別として)市民団体のメンバーは事前準備、当日の作業、会計作業までかなりの仕事を無償で行っており、ボランティアが社会サービス分野でもなくてはならない存在であることがよく分かる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.