「ひと言でいうと“タフ”」――伊東孝紳氏のホンダ社長内定会見を(ほぼ)完全収録(1/3 ページ)

» 2009年02月24日 01時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 本田技研工業(以下、ホンダ)は2月23日、伊東孝紳(たかのぶ)専務が社長に昇格し、福井威夫社長が取締役相談役に退く人事を内定したと発表した。6月下旬に開催する定時株主総会終了後の取締役会で正式に決定する。自動車業界では、1月20日にトヨタ自動車が豊田章男副社長の社長就任内定会見をしたばかり。大手自動車会社2社のトップが6月に交代することとなる。

 新社長に内定した伊東孝紳専務は、1953年生まれの55歳。1978年にホンダに入社した後、車体設計を中心に四輪車の研究・開発に従事した。1990年に発売したミッドシップ・スポーツカー「NSX」では、量産車世界初のオールアルミ・モノコックボディの開発を担当。1993年10月に日本で発売したコンパクトセダン「アスコット/ラファーガ」シリーズでは開発責任者を務めた。2003年6月から約2年間、本田技術研究所社長を務め、2007年6月からは専務に就任していた。

 100年に1度とも言われる危機の中、伊東氏は2009年4月に本田技術研究所の社長に就任し、2009年6月末からは本田技研工業の社長と本田技術研究所の社長を兼務することになる。

 伊東孝紳専務と福井威夫社長が出席した社長内定会見の様子をお伝えしよう。

伊東孝紳専務(左)と福井威夫社長(右)

厳しい時代だからこそ、若いリーダーシップが必要

社長を退任することが内定した福井威夫社長

福井 私は2003年に前任の吉野(浩行)より社長を引き継いで以来、「源流強化」ということを経営のベクトルに定めてきました。開発や生産などすべての領域において、本質に戻って考え、議論を進め、将来さらに飛躍をするため、体質の強化を進めてまいりました。そして、世界の従業員1人1人が高い志を持ち、仕事の質を高めることで、お客さまの喜びにつながる新規の創造を生み出していく。次世代のホンダの実現を目指してまいりました。

 (就任してから)6年の間、自動車業界では環境対応技術へのシフトが大きく進みました。その中でホンダは全世界のCO2低減目標を業界に先駆けて公表し、技術や商品を進化させてきました。特にハイブリッド車の普及という新しい時代を開くインサイトが次の飛躍へのきっかけとなる大きな進歩であると考えております。またパーソナルモビリティを核とした新しい事業、すなわち小型ジェット機ソーラー発電機事業へも進出しました。

 一方、昨年の秋から急激に悪化した世界の経済状況は回復のきざしがいまだ見えず、将来に向けた生き残りのために、経営のかじ取りも大幅な変更を迫られております。しかしながら企業の永続性の観点から、私はこのような厳しい時期だからこそ、新しく若いリーダーシップによってホンダが一丸となって(不況を)乗り越えていくべきと考え、専務の伊東に社長を引き継ぐことにいたしました。

 伊東さんには(本田技術)研究所の所長を兼任してもらい、厳しい時代でもお客さんに選ばれる魅力的な商品、あるいは将来技術開発の陣頭指揮をとり、そして強力なリーダーシップで全世界のホンダを引っ張っていただきたいと考えております。

開かれたコミュニケーションで全社のベクトルを合わせたい

社長に就任することが内定した伊東孝紳専務

伊東 現在、自動車業界は100年に1度とも言われる危機にありますが、ホンダの事業運営についても、生き残りと次の飛躍に向けた決断を迫られる大変難しい状況にございます。このような時期に福井さんから次の社長をやってほしいというお話を受けまして、大変重責ではありますがお引き受けすることといたしました。

 私の役割は福井さんが進めてまいりました「源流強化」の取り組みをさらに進化させて、全社のベクトルを合わせ、新しい時代を切り開く商品を提案していくことだと考えております。福井さんがはっきりと示してくれた方向性、つまりインサイトのように「お客さまがお求めやすい価格で、環境性能の優れた魅力的な商品を提案すること」。これはホンダが常に得意にしてきたものです。この時代に求められているのは、これをいかにスピーディに、そして状況に合わせ柔軟に対応していくかということだと思います。その達成のために全力でチャレンジをしてまいります。加えまして、世界中のホンダの従業員の夢や志を大切にする経営を引き継いでまいります。

 また、全世界の事業の内容やその質を原点に立ち戻って強化し、厳しい時代を生き抜き、将来の圧倒的な競争力につなげるための、効率の高い事業運営体制を構築してまいります。厳しい環境下では、全世界すべての事業において状況の的確な認識、すばやい決断と、行動力が求められています。開かれたコミュニケーションで全社のベクトルを合わせ、この厳しい時代を必ず乗り越え、新たなホンダの価値をお客さまに提案していきたいと考えております。

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