阪神タイガース優勝の最大の功労者である星野さんは当時、日本で最も注目されている人物だった。そんな重要人物の去就問題を知った以上、記者として書かないほうがヘンではないか。実態は書かないのではなく、書けないのだ。スポーツ記者も政治記者もネタがもらえなくなることを恐れるあまり、球団や政治家に遠慮しているだけに過ぎないのである。これを「情け」とは呼ばない。「馴れ合い」というのである。
“二流メディア”の週刊誌と違い、“一流マスコミ”は記者クラブなどの縛りがあって、事実を知っても書かないことがある。だが、情報なんて隠していても必ず漏れるもの。漏れてきた情報を週刊誌がすくい上げ、大マスコミの記者サマを唖然とさせる。週刊誌の役割の1つは、新聞やテレビが伝えない事実を、あえて暴くことにあると思っている。明かされた事実は、国民にとっては有益なことが多いからである。
しかし最近はスクープを放っても、なぜか雑誌は売れないのである。
阪神タイガース星野仙一監督(当時)の勇退記事は2004年、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の「スクープ賞」を受賞した。
吉富有治(よしとみ・ゆうじ)
1957年12月生まれ、愛媛県生まれの大阪育ち。金融専門紙、地方新聞、週刊誌、テレビと各メディアを経験。現在は地元新聞で連載コラムを執筆し、『ムーブ!』(大阪朝日放送)の準レギュラーコメンテーターとしても活躍。目下のテーマは地方自治問題。著書に『大阪破産』(光文社刊)。
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