“電子マネーの向こう”にあったものとは?――IC CARD WORLD 2009を振り返る神尾寿の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年03月17日 00時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

FeliCa (ICカード)=電子マネーだけではない

 「電子マネーの向こう側にきた」――これはフェリカネットワークス社長、芳野弘氏の言葉だ(参照記事)。筆者もほぼ同感である。

 今年のIC CARD WORLDの特徴は、電子マネーのイシュアやアクワイアラの出展がなく、決済用のリーダー/ライターもほとんど展示されていなかったことだろう。Suica電子マネーやnanaco、iD、QUICPay、Edyなど「電子マネー」の利用環境は街中のいたるところで見かけるようになっており、一般ユーザーの利用率も急増している。決済手段としての電子マネー普及は方向性が見えてきており、「勝ち組」と「負け組」の明暗も分かれ始めた。少し皮肉なことに、どちらの電子マネー事業者としてもIC CARD WORLDのような展示会では注目されなくなってしまったのだ。

 一方で、急速に注目度が高まったのが、交通ICや電子マネーなど「社会インフラ」として展開したFeliCaの利用環境を、より効果的なマーケティングのツールとして使うというソリューションだ。電子クーポンやポイント、電子チケット、会員証サービスなどでFeliCaを用いて、店頭など「リアルの場」で販売機会の創出や獲得をする。4マス媒体の広告価値が下落するのと反比例するかのように、店頭マーケティングやCRMでFeliCaを効果的に活用するという展示はヒートアップしていた。

 例えば、フェリカポケットマーケティングのブースでは、中小規模の店舗や地方自治体向けにCRMソリューションの「FeliCaポケット」を展示。地域振興や企業・自治体のエコ活動、病院・クリニックでの利用、そしてネットのアフィリエイトプログラムとリアル店舗/施設の連携など、様々なアプリケーションを提案していた。

フェリカポケットマーケティングの展示では、地方の観光振興や、地域商店街のCRMでのFeliCaポケット利用を積極的にPR。同社のサービスはすでに多くの観光振興プロジェクトで採用されているという。(写真は四国で導入される「めぐりん」と、YOKOSO Japan!で用いられたFeliCaポケット用デジタルキオスク)

FeliCaポケットでエコポイント管理を行うペットボトル回収機や、FeliCaポケットを地域全体で認証・ポイントカードとして用いて、地域活性化するというソリューションを提案していた
スタジアムなどに設置するFeliCa認証型のゲートシステム

 こうしたFeliCaを用いたCRMソリューションの提案は今回のIC CARD WORLDで多く見られたが、なかでもFeliCaポケットの展示が特徴的だったのは、「中小企業や自治体は、コストが安くて実効性のあるソリューションを求めている」(フェリカポケットマーケティング社長、納村哲二氏)と、“コストの安さ”や“導入しやすさ”、システム管理者要らずの“使いやすさ”の部分に徹底的にこだわっていた点だ。

 これまでFeliCaを用いたソリューションというと、とかく先進的だが複雑で高コストなものになりがちで、それが中小の導入企業や一般ユーザーにとっては利用のハードルになっていた。その一方で、FeliCaポケットは応用性は高いがシンプルで低コストなソリューションパッケージを作ることで、普及しやすいものになっている。FeliCaやおサイフケータイの活用というと、大企業が先進的な取り組みとして行うというのが常であったが、FeliCaポケットのようなソリューションが広がっていけば、利用の裾野はさらに広がりそうである。

 →「めぐりん」カードで町おこし――フェリカポケット

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