ロックギタリストはなぜ、音楽サイトの編集長になったのか(前編)――BARKS編集長・烏丸哲也さん嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(3/4 ページ)

» 2009年04月11日 10時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

BARKSの使命とは?

 「BARKSの使命は、音楽情報を求めている人と、それを提供したい人とを結びつけること。それに尽きます」と、烏丸さんのスタンスは明確だ。

 かつての紙媒体の時代には、多少なりとも実現していた、正確かつニーズにかなった音楽情報を得られる環境。加えて、かつて「音楽好きのライフスタイル」であった、書店・レコード店巡りをして、ゆったりと立ち読みや品定めを楽しみ、そして事情通の専門スタッフとの交流を通じて“かゆいところに手の届く”ディープな情報を入手できる環境。

 こういった今は失われた「環境」を、BARKSは、音楽情報サイトという枠組みの中で構築しているようだ。こうしたことを実現していく上で、日々、どんなことを大切にしているのだろうか?

 「ミュージシャンが生み出す感動というものは、時代やジャンルを超えて、普遍的に存在するものだと思います。それを愚直に伝えていくという姿勢を私は貫いています」。そのためには、作品の内容を読者に伝えるに際しても、使い古しの常套句を並べるのは論外としても、単なる礼賛記事でもダメで、きちんとクリティカルポイントを押さえた上で、ユーザー目線に立った紹介をしないといけないのだという。

インターネット時代だからできることもある。写真は、iPhone向けに最適化してBARKSの情報を配信している「iBARKS」(http://i.barks.jp/)

 「ジャーナリズムとは異なりますので、アーティスト側から提供される情報に関しては、基本的に選別は行いません。とは言っても、それを右から左へと丸投げするのではなく、得てして手前味噌になりがちなアーティスト側の情報に関して、その『想い』を大切にしつつ、ユーザー目線にフィットする形にして、情報発信するようにしています」

 烏丸さんの口調は熱を帯びる。「コンテンツの良さをちゃんと伝えるためには、そうした言葉による紹介はもちろん、加えて楽曲の視聴や、書籍の試読ができるようにすることも大切だと思っています」。かつての書店・レコード店全盛期の「良き文化」を21世紀という新しい時代の文脈の中で、そうやって生かそうとしているのだ。

 では、情報提供元のアーティスト自体については、烏丸さんや編集部として、一定の方針の下に選んでいるのだろうか?「インターネット時代になってから、PVを稼げるアーティストばかりが取り上げられるようになってしまっているのは大問題です。私は、本来売れるべきアーティストがちゃんと売れるようになるべきだと考えています。そういう意味で、これまでは、機会損失が大きかったと思いますよ。

 J-POPでもロックでも、メジャー・インディーズを問わず、一定以上の才能を有し、気持ちの『熱さ』のあるアーティストと積極的にパイプを作り、彼らの情報をユーザーに届けていきたいと思っています」

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