「そんなの意味があるのですか?」と言いたげな新入社員たちへ(1/2 ページ)

» 2009年04月13日 12時32分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]

著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 いろいろな会社で、今年も、新入社員評を聞く季節になった。40歳も過ぎると、自分自身が新入社員だった頃のこともすっかり忘れ、「そんなの意味があるのですか?」と言いたげな、小利口な新入社員の諸君には、ひと言、言いたくなる。

「経験」と「薫陶」が、合わせて90%

 理想の上司&良いリーダーとは何だろう? 面白いデータがあった。神戸大学大学院経営学研究科教授の金井壽宏さんが、「経験がリーダーをつくるのか(関連リンク)」というコラムのなかで、こんな調査結果を披露されている。

 「2006年に、リーダーシップの体系的な育成で定評のある米国企業群を調査した。そのときにそれこそほぼあらゆる会社で耳にしたのは、ロミンガー社(Lominger)の70-20-10という数字だ。ロミンガーという社名は、CCL(センター・フォー・クリエーティブ・リーダーシップ。リーダーシップの研究と研修を扱う機関)の創設メンバーの2人(LombardoとEichinger)の名前を連ねた(Lom-inger)ものだ。

 ここは今、米国でもっとも注目されているリーダーシップ育成機関として知られている。ここで経営幹部としてリーダーシップをうまく発揮できるようになった人たちに、「どのような出来事が役立ったか」を聞くと、なんと70%が経験、20%が薫陶、10%が研修という結果であった」

どのような出来事が役立ったのか?

 新入社員を、良き社会人にして、良いリーダーへと育てるために必要なものは、「経験」と「薫陶」が、合わせて90%というわけだ。「薫陶」は、辞書には「人徳・品位などで人を感化し、よい方に導くこと」とあるから……「人徳・品位ある上司」が、仕事の「経験」を上手に導くために、「部下を感化させる」ことが、良いリーダーの育成方法ということになるのだろう。

頭で理解することができない「感化」

 リーダー教育とは、「感化」である

 「感化」とは、理論ではない、コトバではない。頭で理解することではない。身体で学習することだ。毛穴から染み込むように、血肉になることだ。「社風」が、社員教育にとって重要になるのは、「黙っていても学ぶものが、感じるものが、会社にあるかどうか」という話である。

 だから、新入社員たちのリーダーの資質を見極めるポイントは、「そんなの意味があるのですか?」と言うか、言わないか? そんな顔をしているか、しないか? である。

 働いて数日の経験で、いま上司が言ったことの意味や価値が自分で語れない。自分にその語彙(ごい)がないのなら黙って聞いておく。それをハンを押したように「役に立つんですかぁぁぁっ?」だと? そんな新入社員には、「いっぺんおまえの父ちゃんを連れてこい」と言った方がよい。

 「感化」された経験のないものは、「感化」させる大切さが分からない。身に染みていない。「黙って聞いて学ばせる」ことが、教育である。高校時代の難しい数学や物理の勉強が、何の役に立つかは分からなかった。大学の時の、マルクスやなんちゃらも、実際のところ、いまだに何の役に立ったかは不明である。

 しかし、それをやるしかなくて、嫌々でもやりながら、ここからどう脱出するかを模索する。自分でそれが役立つかどうかを発見し、次を創造すること自体が大切なのであって……最初から、合理的な道があるということを教えるのは、教育ではない。

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