昇給はダメだが、ボーナスアップならOKと言われた。なぜ?

» 2009年05月08日 07時00分 公開
[金児昭,ソフトバンククリエイティブ]

問題

 優秀な営業成績をあげたB君。給料のアップを期待していましたが、給料(月給)は大して変わりません。上司は「ボーナスで調整するから」と言います。どうして、給料は上げてもらえないのでしょうか?

(1)ボーナスは給料ではないから

(2)給料は年功が望ましいから

(3)給料を上げると給料以外の出費もアップするから

(4)給料は一度上げると下げづらいから

答え

 月給もボーナスも同じ給料ですが、月給は厚生年金保険料や健康保険料などの計算の基礎になっています。この保険料は会社も負担していますから、給料が上がると保険料(福利厚生費)も上がります。さらに、退職金も月給と勤続年数で計算する会社が多いので、月給が上がると退職金がアップします。さらに、ボーナスは特別手当の意味合いがあるので成果に応じてアップダウンが容易ですが、日本人は月給は上がることはあっても下がらないとどこかで思っています。

 正解は(3)(4)です。

解説:給料よりもボーナスを増やすほうがコスト安

 会社が支払うコストには、売上に比例するコスト(変動費)と売上にかかわらず一定金額が発生するコスト(固定費)があります。固定費が高いと最低限必要なコストが高くなるので、経営者はできるだけ固定費は低く抑えたいと考えます。月給制のとき、人件費は固定費です。人件費というと、お給料をもらっている側の人は、月給とボーナスを合計した年収を思い浮かべるかもしれませんが、会社が支払っている人件費はそれだけではありません。

 年金問題などの報道で「標準報酬月額」という言葉を聞いたことがある人もいると思います。年金や健保の保険料は月給に応じて決められており、会社が半分程度を負担しています。給料明細を見て、「健保や厚生年金でたくさん引かれているな〜」と思うかもしれませんが、実は引かれているのと同じくらいの額を会社が福利厚生費として支払っています。これも固定費となります。

 ボーナスからも同様に保険料が発生しますが、給料は退職金の算定の基礎にもなっています。給料よりもボーナスを増やしたほうが会社にとってはコスト安なのです。

著者プロフィール:金児昭(かねこ・あきら)

 1936年、東京都生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業後、1961年、信越化学工業に入社。38年間、経理・財務の実務一筋。1992〜1999年、常務取締役(経理・財務、法務、資材担当)。現在、経済・金融・経営評論家。信越化学工業顧問。日本CFO(最高経理・財務責任者)協会最高顧問。30代で会計士試験に3度失敗。落ちっぱなしの公認会計士委員。

 主な著書に『これでわかった!バランス・シート』『「経理・財務」これでわかった!』(以上、PHP研究所)、『お父さんの社交ダンス』(モダン出版)、『私がほしかったダンス用語集』(中経出版)など多数。本書は106冊目。


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