円高になるといつも「企業の業績が悪化する」という報道がなされます。どうして円高になると、急に日本企業の業績は悪化するのでしょうか?
(1)円が高くなると輸入原材料の価格が上がるから
(2)円が高くなると値上げをしなければならないから
(3)円が高くなると不況になるから
(4)円が高くなると海外通貨建て(例えば、ドル建て)の単価が下がってしまうから
海外の市場では、円建てでビジネスが行われることは稀です。世界へ輸出している会社は円高になると、同じだけ輸出していても円に換算したときの輸出金額が減ります。円対ドルであればドル建ての単価が下がってしまうからです。値上げによって売上数量が減るケースもありますが、影響が早くて大きいのは単価が下がってしまう(モロに利益減)からです。正解は(4)です。
日本の企業は日本国内だけではなく、世界中のいろいろな国でビジネスを行っています。グローバル化の進んだ会社では、日本国内の売り上げよりも海外での売り上げの比率のほうが高い会社が少なくありません。そうした状況では、円高とかドル安、ユーロ高など、為替の変化は企業の業績を直撃します。
例えば1ドル=130円のとき、1台1万ドルの自動車が売れれば、売り上げは130万円です。1ドル100円になったら、同じ自動車が売れても売り上げは100万円にしかなりません。ドルが3割下がれば、売り上げも3割下がってしまいます。海外に子会社があるとすれば、同じ売り上げを上げていても、円がドルに対して3割上がるだけで、利益も3割減ります。さらなるコストダウンを迫られたり、もっとたくさん売る方策を考えるなどの企業努力が求められるのです。
逆に海外から原材料を輸入したり、輸入した商品を国内で販売したりしている会社の場合は、輸入価格が下がるのでコストダウンとなり、円高は有利に働きます。
著者プロフィール:金児昭(かねこ・あきら)
1936年、東京都生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業後、1961年、信越化学工業に入社。38年間、経理・財務の実務一筋。1992〜1999年、常務取締役(経理・財務、法務、資材担当)。現在、経済・金融・経営評論家。信越化学工業顧問。日本CFO(最高経理・財務責任者)協会最高顧問。30代で会計士試験に3度失敗。落ちっぱなしの公認会計士委員。
主な著書に『これでわかった!バランス・シート』『「経理・財務」これでわかった!』(以上、PHP研究所)、『お父さんの社交ダンス』(モダン出版)、『私がほしかったダンス用語集』(中経出版)など多数。本書は106冊目。
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