通称『アサ芸』――。正式名『週刊アサヒ芸能』の読者は、大半が男性だと言われている。雑誌名に「アサヒ」と入っているので、『週刊朝日』のように朝日新聞と関係があるのでは? と思っている人もいるかもしれないが、まったく関係はない。
ライバル誌としては『週刊大衆』『実話時代』『週刊実話』などが挙げられ、極道、エロ、スキャンダルが売り物だ。しかし他の週刊誌と同様、『週刊アサヒ芸能』も部数が落ち込んでいる。こうした逆行の中、元編集長の佐藤憲氏はどのような戦略を練っているのだろうか?
元木昌彦(司会):出版社系で古い週刊誌といえば『週刊新潮』(1956年創刊)といわれているが、(芸能ゴシップ新聞『アサヒ芸能新聞』がルーツとなっている)『アサヒ芸能』(正式名:週刊アサヒ芸能、1956年創刊)も古い。『アサヒ芸能』といえば、極道情報に大変強い。私も昔、山口組と一和会の戦争があったとき、一和会の佐々木組長に会いに行った。もちろんその世界で権威のある雑誌といえば『アサヒ芸能』だが、私は『月刊現代』として取材に行った。すると「どこの雑誌だ?」「『アサヒ芸能』のようにならないとダメだぞ」と言われてしまった(笑)。そのとき「『アサヒ芸能』ってスゴイんだなあ」と、改めて感じたものだ。
最近、『アサヒ芸能』の記事で面白いと思ったのは「徹底検証 ヤクザと裁判員制度!」「アサ芸でしか読めない『新制度のカラクリ』」だ。『アサヒ芸能』は“持ち味”を生かしているようだが、残念ながら『週刊大衆』に部数※で負けている。こういったことも含め、佐藤元編集長にお話をうかがいたい。
佐藤憲:実は私は3代前の編集長だが、週刊誌の最前線にいることには間違いない。ご案内された通り、元々は『アサヒ芸能新聞』というタブロイドの新聞でスタートした。そして昭和31年(1956年)に『週刊新潮』に遅れること半年で、週刊誌となった。今年の10月で丸53年となる。ちなみに私と同じ歳。ですから「(佐藤さんは)アサ芸を作るために生まれてきた」とよく言われる(笑)。
さきほど元木さんの言葉にもあったように、『アサヒ芸能』は極道モノに強いというイメージがあるかもしれない。あちらの世界との関係性が強かった時代もあったかもしれないが、現在はそういうことはない。(極道から)かなり厳しいプレッシャーをかけられている。
ですので私どもの雑誌は極道からのプレッシャー、(合法か非合法かという)司法からのプレッシャーという現状がある。裁判の話について申し上げると、『週刊現代』の加藤さんには及びませんが、私も現役のころは数多く訴えられた。ただ非常に難しいのは我々は有名人のスキャンダル、とりわけ下半身のスキャンダルを中心に記事構成している。一番難しいのは公共性、公益性という……(会場内笑い)問題が大前提になる。この点の立証が非常に難しい。
ウチの顧問弁護士から、私はいつも怒られている。「君の記事には公共性と公益性のカケラもない。これをどうやって裁判すればいいんだ」と(笑)。しかし弁護士の先生は知恵を働かせて、頑張ってくれている。残念ながら、私は(裁判で)勝ったという記憶は……1件だけ。あとは負けたか和解という形で決着している。和解といっても「仲良くしましょうね」といった感じではなく、ある程度こちらがお金を払っている。結局、和解といっても負けに等しい。
『アサヒ芸能』のような週刊誌においても、かなり裁判が多くなっていて、それがプレッシャーになっている。私の後任の編集長は3人いるが、もし裁判が“負の遺産”として彼らを萎縮させているのであれば、私は反省しなければならない。
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