差別化のポイントは“人”、トレーダー・ジョーの販売戦略(2/2 ページ)

» 2009年08月03日 07時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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「人」で差別化する

 「人」で差別化するという考え方は、店舗、オンラインを問わず、また業界を問わず、至るところに現れはじめている。ネット企業としてこれを実践して、アメリカの流通に新風を吹き込んでいるのが、以前からお話ししている「Zappos.com(ザッポス)」という会社だ。「ザッポス」は、ザッポスの理念と文化を深く体得したコンタクトセンター社員たちに、個性を色濃く打ち出した接客をする自由を与え、顧客との間に「他社には真似できない」つながりを築きあげることに成功している。

 顧客サービスの接点では、過去には「効率」の名のもとに、人ならではの力が押さえつけられる方針が採られてきた。レジでも、コンタクトセンターでも、顧客1人に費やす時間を測り、「パフォーマンス指標」として用いるという考え方がこれを物語っている。サービスは、モノと同様に、大量生産できるものとして、アッセンブリー・ラインにのせられてきた。レジのキーをいかに速く叩くことができるか、いかに正確にデータを入力できるか、などといったことだけが働く人に要求されてきたが、これからはそうではない。

 感動、愛着、仲間意識など、人だけが創り出すことのできる価値が、何にも勝る差別化だと、多くの企業が気付きはじめている。小売り、電話通信、金融、PCサービスなど、米国のあらゆる業界でこれを実践に移す企業が頭角を現してきている。

 ウォルマートが市場シェアの5分の1強を占める食品小売業界では、この傾向が特に顕著だ。トレーダー・ジョーに限らず、従来型のスーパーも接点の強化、いわば「人間化」をめざして動きはじめている。

 ウォルマート、Amazon.comという二大巨獣を相手に、価格で競える時代でないことはもう目に見えている。とりたてて特殊な商品でない限り、「どこに行っても同じようなモノが買える」という市場における競争の本質を、我々は見直すべきだ。「人の力を、いかに引き出し、伸ばし、発揮させるのか」。経営者が最も頭を悩ませるべきは「人財戦略」という時代が到来しているのだと感じる。(石塚しのぶ)

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