カーシェアリングはクルマ社会の賢い知恵……有効利用するカギは?松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2009年08月04日 07時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

環境住宅地のカーシェアリング

 本誌2008年10月14日号「“環境住宅+共同生活”型ライフスタイルへの憧れ」で取り上げたゲロルズエッカー環境住宅地でも、13世帯が1台の小型車を共同利用している。小規模なカーシェアリングの例だ。クルマの共同所有は税金や保険の問題があって困難なため、使用するのは参加者の1人の持つ古いクルマである。

 いわゆる環境住宅地にはさまざまな種類があり住宅地へのクルマの乗り入れ制限や「住宅地内の交通政策」もそれぞれ異なる。現代社会にあってクルマの乗り入れを100%禁止するのは非現実的なため「用事があればクルマを乗り入れてもいいが駐車は禁止」として自家用車と生活空間を分離することが多い。

 ここで取材する前、筆者は「環境住宅地なのだから自家用車を所有する世帯は少ないだろう」と想像していたが実際は40世帯中、自家用車を持たないのはわずか1世帯。この点に関して住宅地の会長は「我が家は夫婦と子ども2人も免許を持っている。私以外は毎日クルマを使うことはないが、それでも4人暮らしで車を1台しか持っていないこと自体がエコな生き方です」

 自家用車1台では足りないが、かといって2台目を持つのは不経済だしエコ的でもない。そんな世帯にカーシェアリングはピッタリだ。

ゲロルズエッカー環境住宅地の中央広場。カーシェアリングは「クルマの少ない住宅地づくり」に役立っている

シティー・モバイル

 これに対し筆者の住むカールスルーエ市全域で1996年からカーシェアリング事業を展開するシティー・モバイル社には自家用車を持たない会員が多いという。シティー・モバイル社は各種自動車約200台を運用し、2500人以上の会員を抱える都市型のカーシェアリングで比較的人口密度の高い市街地を中心にクルマを配置している。郊外にあるゲロルズエッカー環境住宅地と違い市街地は公共交通が充実しているため、自家用車を持たなくても生活できること、そして駐車場を探すのが大変なことからカーシェアリングだけの生活も十分可能だ。

市街地は常に駐車場不足。周辺に住む住民は有料許可証を取得して駐車できるが、場所が割り当てられているわけではないので空きスペースを探すのが一苦労

 カーシェアリングのクルマは多くの場所に配置されているほど便利になる。しかし実際にはクルマの台数が限られ利用者の分布は偏っているから、単純に広く薄くばら撒けばいいというわけではない。配置の仕方にはルールがあり、その地域に17人以上の会員がいれば1台配置してもらえ、さらに会員が増えれば別の車種を追加してもらえる。車種が増えればそれだけ用途に合わせた利用が可能になり、例えば1人で買い物に使うミニカー、家族で遠出のできるファミリーカー、ちょっとした荷物を運べるワゴンなどを、生活の場面に合わせて使えるようになる。

 従って会員は近所の知り合いにカーシェアリングを薦め、新規会員の勧誘にも熱心だ。利用者が自らの利便性を動機として新規会員の獲得に努力するのだから最も効率的な宣伝方法と言えよう。まさに「地域に根ざした我々の自家用車」である。

市街地の公共駐車場に停められたカーシェアリングの車(手前の2台、左)、車体に描かれたシティー・モバイル社の名前と連絡先(右)

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