朝日新聞の記者はそんなにスゴイの? 日本の常識と世界の非常識上杉隆×ちきりん「ここまでしゃべっていいですか」(1/2 ページ)

» 2009年08月05日 11時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 全10回でお送りする、ジャーナリスト・上杉隆氏と正体を明かさない社会派ブロガー・ちきりんさんの対談7回目。前回、上杉氏は「若い世代のジャーナリストが育っていない」という問題点を指摘。これに対しちきりんさんは、多くのジャーナリストは記者の仕事しか知らない点に着目した。

多くのジャーナリストは記者の仕事しか知らない

ちきりんさん(左)と上杉隆氏(右)との異色対談

ちきりん 上杉さんの手法はリスクが大きいですね。100人のジャーナリストが上杉さんと同じようにやっても、何人生き残れるか……。

上杉 メディア希望の学生には、こう言ってます。「面接などで絶対に上杉隆の名前を出してはいけない」と(笑)。ましてや尊敬するジャーナリストや感銘を受けた本の名前を挙げる際にも、「上杉隆の名前を出すな」とも。

 入社して正式採用されてから「上杉隆」の名前を出した方がいい、とアドバイスしています。だけど“干される”かもしれないよ、とも(笑)。

ちきりん お話を聞いていると、多くのジャーナリストは記者の仕事しか知らないようですね。違う業界を少なくとも2つ知らないと、自分の立ち位置が分からないのでは? 

 欧米では転職が当たり前なので、日本でも転職経験を持つ人が増えるのはいいことだと思っています。なぜなら複眼的な視点を持つことができるし、2つ知ると3つ見たくなり、3つ知ると4つ見たくなるもの。そうしていろいろな視点を持つことができるのではないでしょうか。

 外資系企業には新卒採用より中途採用が中心の会社が多くあります。なので社内には多くのバックグラウンドを持った人が集まり、10人いれば10個の業界を知ることができます。いろいろな経験を持つ人と接していると、世の中の“距離感”のようなものが、分かってくると思うのですが。

上杉 記者クラブの本が書けたのも、いろいろな経験をしたことが役立っていると思っています。僕は大学を卒業し、NHKに就職した。もちろんNHKは記者クラブに加盟しており、そこで働いてきました。その後、鳩山邦夫事務所で広報担当をしていたので、記者クラブの内側で外に向かって情報を発信していた。

 そして記者クラブのオブザーバー的な立場のニューヨークタイムズで仕事をし、今はフリーの立場で、記者クラブの外側にいることに。つまり4つの視点があったから、記者クラブのことが書けたのかもしれない。

ちきりん 日本の記者は、記者クラブ方式しか知らないので1つの視点しかない。なので、読者も含め複数の視点を持った内容の本が出ると、面白く感じるのでしょうね。

上杉 だけどこの本が出たとき「上杉はデタラメばかり書いている」といった批判が多かったですね。そこで僕は「どの部分がデタラメですか?」と聞くのですが、一切反論はない。だから論争にもならない。ちきりんさんがお話されたように、日本人が論争下手なのは1つの視点しかないから、客観的に物事を考え、話をすることができないからなのかもしれませんね。

 福田前首相が退陣記者会見をしたときに、「私は自分を客観的に見ることはできるんです。あなたとは違うんです」と言いましたよね。あのときの「あなた」とは、質問をした中国新聞の記者のことですが、彼がこう言っていました。「当時、福田さんは客観視できない人だと思ったけど、今の麻生総理を見ていると、福田さんはまだ客観視できる人だった」と(笑)。

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