遠藤一平監督が語る、自主映画『DT』の“裏物語”郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2009年08月20日 07時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター作品販売「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『ナレッジ・ダイナミクス』(工業調査会)、『21世紀の医療経営』(薬事日報社)、『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。2009年5月より印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン


 1本の映画制作のウラには、もう1本の映画ができるほどの“制作秘話”がある、と言われる。しまらない映画にはつまらない内輪話しかないものだが、情熱をかけて作られた映画には、語り尽くせない秘話があるものだ。どんな制作秘話が作られるのかは、制作者や監督、出演者や関係者の思い入れ次第なのである。

 「自分たちがやりたい表現を撮ろう」から始まった自主映画『DT』。メイキングフィルムはまだ編集中ということなので、まずは文字で制作秘話をお伝えしよう。

Amebaブログで制作日記も綴られている

 2008年初頭、遠藤一平監督のもとに持ち込まれた企画テーマは“絆”。口は出さずにカネは出すというある大手企業がスポンサーだったので、(キズナというベタなテーマに)乗ったものの、現実は干渉されてばかり。

 「それなら自由に撮ろうじゃないか」ということで、監督が企画をホン(台本)にして“DT”(ダブルトーク=二枚舌という意味が原点だが、ほかにもたくさんの意味が込められている)と名付けた。監督の助監督スタッフが設立した会社が出資者となって企画を買い取り、自腹で制作費を出した。監督の人脈・人望・熱意でプロの制作スタッフが集まり、「1カ月だけ予定を空けてくれ」というような所属事務所との駆け引きの末、プロの役者陣がそろった。

 だが、映画がある程度完成した今でもまだギャランティは支払われていないという。いや、スタッフ1人1人がカネ、想像力、演技、美術、CG技術……など何かを出資して制作している。

 「この映画を普通に撮ったら、いくらかかるんですか?」と遠藤監督に聞くと、彼は手元の台本を手にして言った。「この厚さだと3億円くらいですね」

『DT』の台本
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