JR東日本の自販機に、隠されたある特徴とはそれゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2009年09月25日 10時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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自販機を起点にプラットホームが変わる?

 同社は、伊藤園と共同開発した緑茶飲料「朝の茶事」やアサヒ飲料との共同開発による「ワンダ朝のカフェオレ」など、通勤、通学途上で購入する商品を顧客に提案する展開も行っている。

 顧客の「不便」の解消にも努めている。かつての100円ワンコインで飲料が買えた時代ならともかく、現在の150円や130円という飲料の価格では、購入する時には小銭がつきものだ。ちょうどピッタリの小銭があるとは限らない。うっかり千円札で購入しようものなら、大量の釣り銭で財布は瞬く間にパンパンになってしまう。電子マネーが普及している今日において、小銭に悩むのは自販機ぐらいではないだろうか。そこで同社は、駅ナカの立地を生かして電子マネー「Suica」対応をいち早く進めた。

 同社の取り組みの1つをJR品川駅の同社自販機で目にした。ハウス食品の「ウコンの力」が自販機に入っていたのだ。「朝の茶事」や「ワンダ朝のカフェオレ」といったオリジナル商品に代表されるように、主に「朝」の購入を狙う展開だ。つまり、顧客に朝の飲料購入時に「帰りに酒を飲む時には買っておいて!」と提案しているのだろう。自販機でウコンの力を扱っている例は珍しい。

 こうした一連の取り組みが功を奏し、自販機ビジネス頭打ちの中で、同社は2006年8月の会社設立以来、売上高は2年連続で約40%増と気をはいている。

 「自販機イノベーション宣言」は、こうした一連の施策にさらにターボをかけるべく、同社が社内外にコミットメントを示したものだろう。

 まだその具体的な取り組みは明らかになっていないが、「FAN×FUN プラットホーム プロジェクト」なるものが9月から始まっている。キャンペーンのホームページによると、エキナカ自販機 acure<アキュア>を中心に情報発信をおこない、プラットホームで心癒すひとときを演出しますとのことだ。

 もしあなたが週5日・毎日5分電車を待つとすると、プラットホームで過ごすのは年間で約22時間。意外と長いことに驚きます。だからこそ、プラットホームがもっと楽しくなれば、あなたの毎日がちょっと楽しくなるに違いありません

 う〜ん。楽しみだ。徹底した利用者目線。「自販機イノベーション宣言」が今後、どのような展開になっていくのか。その変化を追うだけでも、日々電車に乗るのが楽しくなるではないか。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサ ルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダ イヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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