逆転のカギは「BIG」、死地から甦ったサッカーくじ(3/4 ページ)

» 2009年10月30日 11時46分 公開
[Business Media 誠]

新商品「BIG」

 2006年からさまざまな改革が行われたが、中でも最も売り上げに与える影響が大きかったのは新商品「BIG」の導入だ。BIGの対象試合はJ1およびJ2の14試合だが、従来のtotoとは異なり、くじの購入者が結果を予想するのではなく、コンピュータがランダムに出した結果が予想となる。

 BIGについて真下氏は、「従来のtotoは『予想を楽しむ知的ゲーム』であることを強調していたが、BIGは『サッカーに詳しくないお客さまにも楽しんでもらえる新商品があってもいいのではないか』とスポーツ議員連盟のスポーツ振興投票プロジェクトチームからいただいた提言や、お客さまからお寄せいただいた声などから生まれました」と話す。

 当せん金の最高額は3億円で、キャリーオーバー※発生時は最高6億円となる。それまでの最高当せん金額は、ロト6のキャリーオーバー発生時の最高4億円だったが、BIGは当時、国内最高額の当せん金額が配当可能なくじとなった(現在では「チャリLOTO」の最高12億円が国内最高額となっている)。また、BIGの1等当せん確率は478万2969分の1と、競合であるサマージャンボ宝くじの1000万分の1やロト6の609万6454分の1より高い。

※キャリーオーバー……前回のくじで当せん者がいなかったり、当せん金が余った場合、当せん金が次開催時の当せん金に上乗せされる。

 真下氏は「2006年までにtotoを5年間販売してきて、青少年の健全育成に悪い影響を及ぼすのではないか、お客さまの射幸心をあおるのではないかといった販売開始時に懸念された問題が起きることはなかったことで、規制が見直されたことも追い風になったのではないか」とも振り返る。また、スポーツ振興投票プロジェクトチームからの提言によって、規制が緩和され、その1つとして、インターネットでは24時間、コンビニエンスストアでも販売することが可能となった。

 販売チャネル別の売り上げシェアを見ると、2006年シーズンは「toto売り場」(51.8%)、「コンビニエンスストア」(25.4%)、「インターネット」(22.9%)だったが、2008年シーズンは「toto売り場」(30.4%)、「コンビニエンスストア」(35.2%)、「インターネット」(34.4%)。「2009年シーズンはややインターネットが増えている状況です」(森田氏)

 2006年9月に導入されたBIGは、ほぼ毎週(Jリーグの試合がある週)開催され、1等当せん金や当せん確率が比較的高く、予想の手間がないという商品性に加え、コンビニやネットなどの販売チャネル多様化の追い風も受けて大ヒット。現在では売り上げの7割を占める看板商品に成長した。

 BIGの人気について森田氏は「コンビニエンスストアのマルチメディア端末でtotoを購入する場合、13試合の予想をすべて打ち込まないといけないのですが、BIGなら買いたい口数か金額を選ぶだけでいい。そうした手軽さも受け入れられていると思います」と分析する。

ブレイクのきっかけは

 しかし、2006年からの改革もすぐに結果が出たわけではない。現在は毎回10億円以上の売り上げをコンスタントに記録するようになったBIGも、当初は1億円強の売り上げが続いていた。その流れを変えたきっかけとなったのがシステムトラブルだった。

 2007年5月、数回にわたって1等が出なかったためにキャリーオーバーが積み重なり、購入者が急増。その結果、処理能力が限界を超えてシステムトラブルが発生したことで、しばらくBIGを購入できなくなってしまったのだ。しかし、このトラブルを新聞やテレビなどのメディアが報じたことで、「ネットやコンビニで最高当せん金6億円のくじを買える」という認知が広まったのだという。

 真下氏は「BIGの第278回(2007年5月12日〜19日)の売り上げは61億円を超えるなど、結果的には流れを変える大きなきっかけとなったのですが、お客さまに多大な迷惑をかけてしまっていたので、喜ぶことはできませんでした。1日でも早くシステム障害を復旧させて、再開できるようにしないといけないというのが当時この事業に関わっていた職員全員の気持ちだったと思います」と振り返る。

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