コラム
» 2009年11月05日 08時00分 公開

相場英雄の時事日想:本当に小沢一郎は豪腕なのだろうか? 足で稼がない政治記者たち (2/2)

[相場英雄,Business Media 誠]
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新聞・週刊誌では読めないネタ

 筆者が一番驚いたのは、小塚氏が小沢選挙と同様にドブ板取材を繰り広げた点だ。長年取材現場に身を置いた人間として、「手抜き取材」は即座に見抜く自信がある。が、本書の場合、膨大なデータから実際に載せるネタを選別した痕跡がそこかしこに見受けられるのだ。

 この場合のドブ板とは、足で稼いで集めたネタ、という意味である。インターネットでさまざまな情報を簡単に入手できる現代社会において、この手法は泥臭いかもしれないが、足で稼いだネタは、確実に読者の心に響くのだ。

 小塚氏の所属する日刊ゲンダイは永田町の記者クラブに加盟していないため、取材は飛び込み営業と同じく、相当な苦労を強いられたと推測する。まして隠密行動が多いとされる小沢氏を追いかけるのは並大抵のことではなかったはずだ。同書には、思想的に対極にいるはずの革新系労組などを小沢氏がいかに支持勢力に変えていったかなど、一般紙の政治面では読むことができなかった点まで踏み込んでいる。

 小塚氏は、筆者が日刊ゲンダイで毎週書いているコラム『マネーの深層』の担当者でもある。今回小塚氏の著作を取り上げたのは、身内びいきという観点からではない。その取材の精緻さを多くの読者に知ってもらいたいと考えたからだ。

 また、同書を一番読んでほしいと考えるのは、永田町にいる政治記者、特に若手記者諸君なのだ。新聞やテレビで政治のニュースが伝わる際、読者は政治家の周囲に多くの記者が群がる“ブラ下がり”を目にしたことがあるはず。政治記者にとって、大物政治家に張り付き、その一挙手一投足を伝えるのは重要任務であるのは間違いない。

 ただ、記者クラブの温室に安住し、「ブラ下がり」で聞いた話を、記者クラブや担当デスクで回覧するだけの「メモ」に起こすことだけが仕事だと思っている若手諸君が多いのではないか。

 新聞・テレビの政治ニュースは面白みに欠けると感じている一般の読者も少なくないはず。政治面のニュースについて、「永田町に棲む議員、秘書、政党職員向けのミニコミ情報」(某官僚)と断言する向きが多いのもうなずける。記者クラブ、あるいは永田町を離れ、政治家の本当の素顔を伝えるドブ板取材を数多くこなすことこそが、読者のニーズに応えることではないのだろうか。

 同書の中に、「一票でも多く取り込むための小沢流・メディア操縦術」という項目がある。選挙期間中、小沢氏が中央の大手メディアへの露出を控える理由とそのキモが記されている。

 大手メディアの若手記者、ひいては政治部幹部にとっては相当に耳の痛い話が掲載されている。「小沢は無愛想で豪腕」と決めつけてかかっている大手メディアにも格好の図書であることは間違いない。

 同書は選挙戦術をビジネスに生かすコツがそこかしこに記されている。本コラムの読者者層の多くが若手ビジネスパーソンであることを勘案すれば、同書は格好のテキストになるはずだ。

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