“ジャーナリズムごっこ”はまだ続く? 扉を開かないメディア界(3)上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(1/2 ページ)

» 2009年11月24日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 ジャーナリスト・上杉隆氏とノンフィクションライター・窪田順生氏の対談連載3回目は、なにかと批判の多い記者クラブについて語り合った。「政治家の中で、記者クラブの開放に最も積極的なのは小沢一郎幹事長」という上杉氏。小沢氏といえば、記者会見を苦手にしているはずなのに、なぜ記者クラブ開放に積極的なのだろうか。

上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」:バックナンバー

なぜこの国に、“モミ消しのプロ”は存在しないのか(1)

週刊誌が記者クラブを批判しない理由(2)


窪田順生(くぼた・まさき)

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。

14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)がある。


アイティメディアは実態がないということ?

窪田 アイティメディアは記者クラブに加盟しているのですか?

土肥(編集部) していないですね。実は外務省の記者会見に参加しようと、外務省の担当者にお願いしたのですが、断られました(笑)。

外務省からの連絡:

 この度は外務大臣会見等への参加につき申請いただき、有り難うございます。

 さて、大臣会見等への参加について申請内容を確認させて頂きましたが、貴殿については、9月29日の岡田外務大臣会見で発表した「大臣会見等に関する基本的な方針について」で規定されている参加条件を下記の通り満たしていないため、残念ながら、現状では会見への参加を承認することは困難との結論に至りましたので、お知らせします。

理由:方針2.の協会や連盟への所属が確認できない

(中略)

 なお、大臣会見等に参加できるメディアのカテゴリーに関して、信頼性があり追加することが適当と考えられる報道関係の協会、連盟等がございましたら、検討する用意がありますので、ご提案いただければ幸甚です。

 ご理解の程よろしくお願いいたします。

ノンフィクションライターの窪田順生氏

窪田 アイティメディアは実態がないからダメだということですかね? それこそ勉強不足(笑)。

土肥 窪田さんは主に雑誌畑を歩んでこられたわけですが、記者クラブに入れなかったことで悔しい思いとかされたことはありませんか?

窪田 『フライデー』で記者をしていたとき、大事件が起きると、警察の記者クラブにこっそり潜入していました(笑)。しかしある日、幹事社の人に見つかり、「ヘンな奴がいるぞ!」と叫ばれ……まるで犯罪者扱いされましたね。そして左右にガードマンが付き、外に追い出されました。

上杉 記者クラブには、見事な“スピンドクター記者”がいるなあ。

窪田 考えてみれば「よく記者クラブという制度を作り上げたな」と感心してしまいます。もちろん日本新聞協会が開きなおったこともあるのですが(関連記事)、影で記者クラブの制度を認めた頭のいい役人がいるのでょうね。

上杉 記者クラブ制度の問題はメディアだけにあるのではなく、役人にもあります。彼らが便利だと思うから、この記者クラブを使っているだけ。

 薬害エイズ問題のときに櫻井よしこさんや岩瀬達哉さんが、記者会見の席で質問をしていたら、少しでも状況が変わっていたかもしれない。しかし役人はウソのデータを記者クラブに投げ、記者はそれをそのまま報道した。

 役人は自己防衛のために、記者クラブを利用しているだけ。問題なのは、使われている記者の方が気づいていないこと。とにかく記者は洗脳されていることが分かっておらず、“ジャーナリズムごっこ”をしているだけ。

 ちなみに政治家の中で、記者クラブの開放に最も積極的なのは意外なことに小沢一郎幹事長です。新進党時代から現在の民主党に至るまで、一貫して記者クラブを開放してきました。ただし記者会見はオープンなのですが、会見そのものをあまり開かない。これが問題です。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.