全9回でお送りする、ジャーナリスト・上杉隆氏とノンフィクションライター・窪田順生氏の対談連載4回目。行政や経済団体などに設けられている記者クラブ――。上杉氏はかねてよりこの「記者クラブを開放せよ」と訴え続けているが、なぜ閉鎖的に運営されているのだろうか。その理由について、語った。
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。
『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)がある。
土肥(編集部) さきほど立花隆さんの話がチラッと出てきましたが、お2人は立花さんのことをどのように見ていますか?
上杉 立花さんは海外で言えば、ジャーナリストではなくて、アナリストや評論家といった感じ。しかし日本ではジャーナリストと評論家の区別がついていないため、一緒くたにしている人が多い。
窪田 評論家というのは分析するために情報が必要になります。しかしその情報源が、新聞記者であることが多いため、彼らの悪口を言えない人が多いことが問題。
上杉 立花さんは著書の中で「記者クラブは悪くない」といったことを書いています。また数カ月前に開かれたシンポジウムでも、記者クラブを擁護する発言をしていました。つまり、彼は現場に足を運び、取材をしたことがほとんどないから、記者クラブのことをよく分かっていない。新聞記者からオコボレをちょうだいして、肩書きに「ジャーナリスト」と書くのはやめてもらいたい。でないとジャーナリストとして仕事をしている人に、迷惑がかかってしまう(笑)。
窪田 あと立花さんたちの世代の人たちが、下の世代を潰してきた経緯がありますよね。
上杉 立花さんの世代以降20〜30年の空白期間があって、いきなり41歳の自分がいるといった感じ。僕らの世代でも「いけるかなあ」と思ったフリージャーナリストはたくさんいたけど、みんなそうした上の世代に潰されてしまった。フリーで仕事を続けるのは確かに大変なのですが、気づいてみたら政治分野の若手フリージャーナリストと呼ばれるのは自分1人だけになってしまった感がある。
ハッキリ言って、ジャーナリストのライバルはたくさんいた方がいい。なぜなら、自分のところに集中して降りかかってくる圧力を分散できるので(笑)。
例えば記者クラブの問題に関して言えば、テレビ局や新聞社などから「上杉は出すな!」という圧力がかかってきます。また役人も記者クラブを潰されたら困るので、“上杉問題”ということで話し合っている役所もあるほど。そして最大の抵抗勢力は、実はテレビに出ている政治評論家やコメンテーターと称する同業の人たちなのです。例えば毎日新聞で立派な肩書きを持っている人など。なぜ彼らが抵抗するかといえば、記者クラブを潰されるということは、彼らのビジネスモデルを崩されるから。
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