上杉 小林さんは『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』という本を出されていますが、実はもうすでに新聞と雑誌は死んでいるのかもしれない。いや換言すれば、仮死状態であるにもかかわらず、いまなお自分で自分のクビを締め続けている、といった感じですよね。
小林 あの本は気概や気持ちのうえでの「死」について語り、スピリットは形状に宿るわけではないとげきを飛ばしたつもりですが、構造的な意味での“死”は上杉さんがよく知るところではないでしょうか。メディア業界は“既得権益”の力が大きくて、これまではその枠組みだけでやってきました。なので、業界人もそこに属したら「ゴール」と勘違いしている人も多い。そんな彼らが新たなビジネスモデルを考える、というのは無理なのかもしれない。もちろんこのことはどの業界にも言えることですが……。
上杉 大学教育もその典型ですよね。日本の大学の場合、入学すればゴール。その後は楽しい学園生活。
小林 そのほうが監督者としてはラクなんでしょうね。何もしなくていいから。本当は高いスキルや志を育てるところに注力すべきかと思いますが……。
上杉 よく言われることですが、米国の大学の場合は入学してからがスタート。そこから学生の真の競争が始まります。日米の差ではありますが、これはメディアの世界にも当てはまるのでは。
小林 健全な競争は視聴者や読者のためになる。しかしカルテルされていては、国民のために何かをする、というよりも自分たちのために何もしない、ということになりかねない。産業としては発展を期待できません。
→第3回へ続く。
1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。富士屋ホテル勤務、NHK報道局勤務、衆議院議員・鳩山邦夫の公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、2002年にフリージャーナリスト。同年「第8回雑誌ジャーナリズム賞企画賞」を受賞。
『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社)、『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)、『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)など著書多数。
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