「ふっかけた方が得」の“アンカリング効果”とは(1/2 ページ)

» 2010年01月15日 08時00分 公開
[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 近年注目を集めている「行動経済学」では、「人間が必ずしも合理的に判断したり、行動したりできるわけではないこと」を実験などを通じて検証してきました。すでに行動経済学についての書籍が何冊も出版されていますのでご存じの方も多いと思いますが、人間の意思決定や行動に関するさまざまな効果や法則が発見されています。

 さて、こうした効果の中で、最もビジネスというか商売に活用されてきたのが「アンカリング効果」です。これは、最初にある数字を示されると、無意識にそれが基準(アンカー)となってしまい、その後の判断で影響を受けてしまうというものです。よく引用される実験としては、以下のような2つの質問に答えてもらうものがあります。

1.国連でアフリカ諸国が占める割合は65%よりも高いか、それとも低いか?

※「65」の数字はルーレットを回して出たもの。協力者によっては「10」になるように細工されていた。

2.国連でアフリカ諸国が占める割合は何パーセントか?

 1.の質問文には、65%という数字が含まれています。これはルーレットを回して出ただけの、何ら根拠のない数字です。実験に協力した回答者も、そのことが分かっています。

 ルーレットが「10」=10%となった場合に、国連でアフリカ諸国が占める割合を推測した結果は平均25%でした。一方、ルーレットが「65」=65%であった場合には、平均45%という結果になったのです。つまり、根拠があろうがなかろうが、最初に示された数字が無意識に基準となってしまい、回答が影響を受けてしまうわけです。

国際連合公式Webサイト
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