フィレンツェで声をかけられた……旅行客を狙う、スリの手口松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年01月19日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

生きた美術館

 フィレンツェはまた「生きた芸術都市」とも呼べる。歴史的建築物のみならず、広場や何気ない街角に芸術作品が置かれ、人々が生活する街並み自体が芸術的な価値を持っているからだ。

 例えば、街を流れるアルノ川にかかるヴェッキオ橋は橋の上に建物が建つことで有名だ。3つのアーチを持つこの橋は1345年に建設されて以来今日まで残るフィレンツェ唯一の橋で、第2次世界大戦でも運よく破壊を免れた。昔は橋の上に肉屋などの小売店が並んでいたが、16世紀末に最後の肉屋が追い出されて金細工師に営業権が与えられ、現在は数十軒の貴金属店が営業している。

ヴェッキオ橋の外観(左)と、橋の上で営業する貴金属店(右)

イメージを守る

 正直なところ、今回の旅行ではスリや置き引きの被害に遭わないか、かなり不安に思っていた。数年前にローマを旅行した際、連日、スリやひったくりに狙われ辟易した経験があるからだ。土産物を載せた画板を観光客に押し付け、その下からポケットに手を伸ばす「画板方式」や、万引き集団が観光客を取り囲みワケの分からぬうちにポケットの中身を根こそぎ取っていく「取り囲み方式」など、旅行ガイドブックに紹介されているそのままの手口でくるものだから、呆れるやら感心するやら。経験豊富な日本人旅行ガイドによると、スリには元締めがいて地域内を統括しているのだという。もし何か取られた場合、そういった元締めに話を付ければ取られた品を買い戻すことができるとか(真偽のほどは不明!)。

 フィレンツェにも覚悟を決めて行ったのだが、ありがたいことに一度も危ない思いをせずにすんだ。観光客の集まる場所では多数の警官が巡回し、広場脇にはパトカーが張り付き犯罪を押さえ込んでいたから、スリや置き引きもさすがに手が出ない。裏を返せば犯罪の起きる可能性の高さを示しているわけだが、観光客の安全と街のイメージを守るため並々ならぬ努力がされているのは間違いない。

警官と観光客(左)、路上のバック売り(右)

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