川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
1988年リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。人事専門誌・業界誌・一般誌などにも人事関連分野で多く取り上げられていただき、ラジオ番組のレギュラーを持っていたこともあります。京都大学教育学部卒。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ」
米国のリーダーシップ研究の調査機関であるロミンガー社の調査によれば、経営幹部としてリーダーシップをうまく発揮できるようになった人たちに「どのような出来事が役立ったか」について聞くと、“70%が経験、20%が薫陶、10%が研修”という結果であったそうです。これを見て、「やっぱり経験が一番大事だ。研修など大した意味がないんだ。」と結論付けるのはまったく論理的でありません。経験というのは「仕事」、薫陶というのは「上司の言葉」。これらに研修による「学びと気付き」を加えることで今の実力・能力を持つことができた、と回答をしたわけです。
ここから分かることを丁寧に述べれば、第1に仕事は利益や成果を上げるためだけでなく、個人の成長に役立つ、人材育成につながるためにも存在しているということ。難局を乗り越えたり、場数を踏んだりすることで、できるようになったり自信がついたりすることは、誰しも身をもって知っていることですが、仕事を経験学習と位置付け、各人の成長を念頭に置いてこれを与えなければならないということです。
第2に上司の言葉が大切であるということ。薫陶は、辞書に「人徳・品位などで人を感化し、良い方に導くこと」とありますが、部下が仕事を通して育つためには、仕事やそれを通して経験していることの意味、あるいは自らの思想や信念を上司が伝えなければなりません。単に「経験させていればいい」「経験していれば勝手に成長する」という考えは甘く、また薫陶を与えるに値するものを身に付けねばならないということです。
第3に研修という日常を離れて「学び」「気付く」機会も重要であるということ。1年で2000時間働くとして20時間研修を受けたとしても1%ですから、自らの力量に影響を与えた割合として研修が10%と回答しているのは、かなり大きいと感じます。充実した経験と、良き上司の言葉があったとしても、やはりそれを体系的に定着させる、あるいは別の次元の視点や知識を獲得する機会は重要なのだということです。
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