『サザエさん』なんかどこが面白い? という世知辛い皆さんへ(1/2 ページ)

» 2010年02月09日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 アニメ『サザエさん』の第1回放送は1969年10月5日。今年で41年目を迎える長寿番組である。ゴールデンタイムのドラマの視聴率が20%あれば御の字という時代になっても、平均視聴率が20%前後という非常に高い数字をはじき出す国民的アニメだ。きっとキャラクターも、認知率は100%に近いだろう。

 日曜18時30分から放送という国民的アニメであるため、その視聴率は景気と連動していると言われている。景気の良いときは、日曜18時30分になっても家に帰らず、外食やレジャーを楽しむ家族が多いため、視聴率が下がる。しかし、不景気の時は日曜に外へ出かけないで家にこもり、みんなで夕食を食べながら『サザエさん』を見るというスタイルになるため、視聴率が上がるというわけだ。なるほど。

 ちなみに、ここ3年の1月中旬の『サザエさん』の視聴率は、「2008年1月13日18.2%」→「2009年1月18日20.4%」→「2010年1月24日20.6%」。これだけで断定するのは危険だが、若干ながら上昇傾向であるようだ。

 日曜日にバカ騒ぎせずに、夕方のリビングでおなじみの『サザエさん』のテーマソングが流れるのを聞く。その光景からは、景気への不安を抱えている今の日本国民の連帯感のようなモノを感じる。そこには、安心・安定を望む潜在心理が潜んでいる。上を向いたらキリがない。上昇志向のムリはたたる。その傷をナメ合い、癒やすのが『サザエさん』なのである。

実はお金が動いてる「サザエさん」

 「サザエさんバス事件」というものをご存じだろうか。

 立川バスが、1951年から観光バスの車体に、作者である長谷川町子氏の使用許諾を得ないままにサザエ・カツオ・ワカメを描き、「サザエさん観光」として運行。1970年に作者が立川バスに対し、サザエさんの絵の使用差し止め請求を行ったもの。東京地方裁判所は、バスに描かれた『サザエさん』のキャラクターは著作権法上保護されると認定。敗訴した立川バスは作者に1824万4099円という多額の損害賠償金を払う結果になったというもの。

 当然、漫画のキャラクターは、著作権法上保護されている。『サザエさん』も、東芝が単独スポンサーを降りたころから、ほかの企業でもキャラクターとして使用できるようになった。しかし、その版権の年間使用料はウン千万円以上とも言われている。大企業しか使用許可が下りないのが現状だ。

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