電子化は雑誌の“救世主”になるのか?郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2010年03月04日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

電子と紙雑誌は別モノ?

 紙雑誌で読者がしていることを列挙してみよう。

読み方:くつろぎ読み、パラパラ読み、ちょこ読み、立ち読み、車中読み、ながら読み、ナナメ読み、速読、再読、輪読、積ん読

感じること:重さ、質感、匂い、色、音(ページめくり)

読みながらすること:書き込む、端を折る、破いてメモる、何かを挟む、丸めて持つ、丸めて叩く、広げてあおる

思わずやること:雨傘、日傘、庇、印鑑台、カッター台、椅子(積んで)、土瓶敷き、すし飯あおぎ

 紙雑誌は人の読み方・仕草に合わせて育ってきたメディア。長きに渡り人の手で育てられてきた。だからこんなにバラエティに富んでいる。かたや電子雑誌では「どこでもダウンロード」「検索」「マウスオーバー/スクロール」「照度調節」「電池のある限り」「読み上げ」「バラ売り」とずいぶん違う。紙雑誌と電子雑誌、どうやら別モノではないかと私は思うのだ。

バラ売り

 電子雑誌が雑誌の読み方を変えそうな要素もある。それは記事の「バラ売り」である。

 2009年、開始前に休止に追い込まれた「コルシカ」。これは記事のバラ売りではないが、印刷雑誌の販売サービスで、ページをスクラップして管理することができた※。音楽ではiTunesストアのダウンロード曲数が100億曲を突破したそうで、たぶん1曲99セントのバラ買いが大半だ。

※お詫びと訂正 3/4 12:55 記事初出時にコルシカは記事のバラ売りを志向していたと書いていましたが、誤りでしたので、記事内容を修正しました。読者の皆さまにはご迷惑をおかけいたしました。

 だが、特定の記事だけ買うというスタイルは雑誌でも普通になるのか? そうそう、こんなことはあった。店頭で買いのがした『Papyrus』(幻冬舎)3号がどうしても欲しくて、幻冬舎本社に電話までした。すると「在庫切れです」とサービス係の答え。

 「特集の、後藤久美子さんのグラビアページだけでいいんですが」と食い下がる私。

 「そういうワケにはまいりません」

 すげないんだから。バラ買いならこんな時、便利だ。経済的だし、電子化のメリットになりそう。何か調査をするならバラのニーズは強い。余談だがページ売りでライターに印税が入るシステムができるなら、貧乏ライターも救済される。でもバラ買いは、くつろいで読む雑誌本来の読まれ方ではないと思う。

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