ゲームは単なる娯楽という1ジャンルを超えて、今や私たちの生活全般に広がりつつある。このコラムでは、ソーシャルゲームや携帯電話のゲームアプリなど、すそ野が広がりつつあるゲームコンテンツのビジネスモデルについて、学術的な背景をもとに解説していく。
これまで“プラットフォーム”と言えば「情報端末や通信インフラを提供する企業」を指したが、クラウド※時代にはプラットフォームも「サービス業」となる。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)がプラットフォームとなり、その上にゲームアプリが搭載されるソーシャルゲームは、その先駆け的事例である。SNSは自ら顧客を持つコミュニティサービスだが、その上にゲームアプリというコミュニティサービスがさらに載るという仕組みになっている。
この二重構造について、前回はゲームアプリ側から考えたが、今回はプラットフォームの役割について考えてみたい。前半はオープンプラットフォームの意味について解説し、後半ではDeNA(ディー・エヌ・エー)が運営するケータイ総合ポータルサイト「モバゲータウン」の事例を取り上げる。
SNSサイトとゲームアプリのつなぎ目にあたるプログラムを「API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」というが、この規格を公開することから今日のソーシャルゲーム市場が生まれた。Googleの「OpenSocial」という規格が標準的で、mixiでもこの規格を採用している。
APIを用いることで、SNSのユーザープロフィールやフレンドリストなどの情報に連動させたゲームアプリを開発し、SNSのページに表示することができるようになった。ユーザーからすると、SNSのIDを持っているだけで、外部コンテンツプロバイダーの提供する多種多様なアプリを使うことができるのだ。
IT業界では「規格を標準化し公開することが、参加者の増加を呼び、成功に結びつく」と言われる。そのため、規格の公開を総じて「オープン化」と呼び、オープンにすること自体を是としている風潮がある。しかし、オープン化の本質的な意味は、製品設計と企業間分業を決めることにある。オープン化自体を目的とするのではなく、「何についてオープン化すべきか」という判断基準を持つべきである。
どの製品も複数の部品から構成されており、それを一企業ですべてまかなうのではなく、取引先企業とで手分けをして部品をつくる「企業間分業」が通常行われる。最終製品にするには分業した結果をひとつにまとめなければならないが、その部品間のつなぎ目(インタフェース)の設計が、分業の形態に大きく影響する。
オープン化以前の分業では、お互いの仕事の分担や進捗状況を話し合う「調整」が必要だった。しかし、インタフェースを規格にして固定化すれば、取引先と逐一話し合う必要はない。さらに規格を公開することで、不特定多数との分業が可能となる。例えば、OpenSocialさえ守れば、誰でも機械的にSNSにアプリをアドオンすることができるのだ。
オープン化は、ビジネスデザインそのものである。ソーシャルゲームという最終製品は何かと考え、どこを独立的に切り離し、どこに一体性を求めるのか。そして、プラットフォーム企業とコンテンツプロバイダーとの役割分担について考えなければならない。
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