世の中に必要なヒトたちちきりんの“社会派”で行こう!(1/2 ページ)

» 2010年04月19日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2006年2月1日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 世の中にはいろんなタイプの人がいます。

1.創る人

2.回す人

3.管理する人

4.考える人

5.壊す人

番外.何もしない人

 まずは「創る人」がいて、何かが始まります。“空を飛ぶ”という考えにとりつかれた人たちが、人生をかけて作り出したのが飛行機です。大企業も最初は個人が起業してできました。私たちが日々使っている便利な商品やサービスも、最初は誰かが突拍子もないことを言い出し、それがいつしか実現して普及したものです。

 4年ほど前、ヤマト運輸が社歴を振り返るテレビCMで、「宅急便ができるまで、ゴルフクラブを運ぶ人もスキー板を運ぶ人もいませんでした。全部、私たちが考え出してきたのです」と言っていました。

 郵便局に対する嫌みCMのようにも聞こえます。「民間企業が市場に参入しなければ、今ある便利な新サービスは生まれていなかった」と言いたかったのでしょう。「自分たちこそが市場を創って来た」という自負を感じるCMです。

 この“クロネコヤマトの宅急便”を世に出した小倉昌男氏のほかにも、日本には多くのすばらしい「創る人」たちがいます。松下幸之助氏や本田宗一郎氏はもちろん、リクルートを創った江副浩正氏、ソフトバンクの孫正義氏、多くのIT系、サービス系ベンチャー企業創業者もみんな新しい価値を創り出しています。

「創る人」だけではダメ

 彼らが創り出した価値を消費者に届けるには、誰かが実務を担当してビジネスとして回していく必要があります。「創る人」だけでは、斬新なアイデアも絵に描いたもちで終わってしまいます。それらの価値を具体化して業務としてのオペレーションを担当するのが「回す人」の役割です。

 「決められたプロセスを迅速に着々と進める」のが得意(もしくは好き)で、時にはプロセスの改善に自ら努力する人たち。日本ではこの「回す人」たちが数多く存在し、しかもとても優秀です。日本の教育制度はこのタイプの人を育てるために設計されたと思えるほどです。

 そして「回す人」のすばらしいオペレーションによって組織が拡大し、大企業になると、次は“管理する人”が必要になります。

 会社が大きくなると「回す人」の人数が膨大になるので、その人たちの採用や人事管理をしたり、帳簿を付けて税金を払ったり、銀行からお金を借りたり契約書を作ったり……組織の拡大とともに多種多様な管理業務が発生します。それを担当するのが「管理する人」で、今の日本の組織ではこのタイプの人が最も出世しているようにも思います。

 そうやって大きくなった会社や組織も、数十年経つと必ず制度疲労を起こします。時代の流れに合わなくなってくるのです。すると、それを一気に破壊する人が必要になります。これが「壊す人」です。

 時には外圧(黒船や敗戦)がこの役割を果たすこともあるし、時には自然(地震など)がすべてをゼロリセットします。みんなが慣れている既存の体制に大胆な変化をもたらす破壊者は、それが人であれ自然であれ、たいていの場合、嫌われ、悪者扱いされます。

 また、「壊す人」とセットで必要なのが「考える人」です。回したり、管理したりするのは、基本的に実務です。そういった仕事を担当する人は、日々の細々したことを毎日その場で処理する必要があるため、「本来あるべき姿」について腰をすえて分析したり、じっくり考えたりするのは時間的にも能力的にも難しい。

 そこで学者や研究者として、考えることを専門に担当する人が必要になります。現状の分析に基づき、進むべき道を示し、その理由や方法論を体系立てて説明する。俯瞰(ふかん)的な視点と統計的な分析力、深い洞察力に加え、現実の社会や人間を理解するセンスも求められます。

 残念ながら日本では「考える人」は、リアルな社会から隔離され(もしくは引きこもり)、大学など研究機関内で仲間のみと交流しています。若手の研究者が企業で働いたり、シニアになって大臣や企業の外部取締役に指名されることもほとんどなく、「考える人」とほかの人たちとの協業ができていない状態です。

 最後に、世の中には必ず「何もしない人」もいます。何に対しても反対し批判する活動家もいるし、反対に何にたいしても関心がない「社会に無関心な人」もいます。

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