大都市に“変わった人”が多いワケちきりんの“社会派”で行こう!(1/3 ページ)

» 2010年04月26日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2007年1月8日と1月14日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 大都市、例えば東京がほかの都道府県と比べられる時によく言及されるのは、その「平均値の高さ」です。平均所得が高いとか大学進学率が高いといったことで、また平均初婚年齢を見てもかなり高く(遅く)なっています。

 しかし、確かに東京の平均値は他都道府県よりかなり高い(もしくは低い)場合が多いのですが、ちきりんは「大都市の特徴は、平均値の高低ではなく、むしろその“バラツキの大きさ”にある」と思っています。

 例えば、一般的に大都市では平均所得が高いですが、同時に生活保護率も高いし、ホームレスの数も多いです。平均所得が高いといっても、必ずしも「豊かなエリアである」とは言えません。むしろ「金持ちも多いが、貧しい人も多い」エリアであり、つまりそれは「ばらつきが大きい」ということなのです。

 大都市のばらつきの大きさ、多様性は、経済面だけでなくさまざまな面で圧倒的です。優秀な人からクレイジーな人まで、おしゃれな人からダサダサな人まで、24時間働く人から一生働かない人まで幅広くそろっているのが大都市です。

都道府県別の生活保護率(出典:厚生労働白書)

 この多様性の源泉は、その構成員が「多彩な場所から集まってきていること」にあります。“東京は田舎者の集まり”とよく言われますが、まさにその通りでそれこそが東京の多様性を生み出しているのです。

 反対に、地方は「どんどん画一的になる運命」にあります。なぜなら「生まれたそのエリアが大好きな人」だけが、大人になってもそのエリアに残るからです。そうでない人は、より大きな都市に出て行って帰ってきません。こうして、大都市はますます多様性が増す一方、人口の流出エリアでは「その地域が大好きな人だけ」が残り、年々画一性が高まるのです。

 また、一定以上多彩な地方から恒常的に人口流入があると、“多様性の排除ができない状態”になります。例えば、関西や名古屋に他地域出身者が転勤すると、その地域への同化を求める強いプレッシャーがかかります。地元の人とヨソ者の比率に大きな差があるからです。

 しかし、東京では新しく入ってきた人を「東京風に染めよう」とプレッシャーをかける人はそれほど多くありません。なぜなら、そもそも周りの人の多くも“つい最近、東京にやってきたばかり”なので、他人にそんなプレッシャーをかけるほどのものを持っていないのです。

 というわけで、地方はより強固にその地域性を維持し、一方で他者に同化プレッシャーをかけない大都市では多様性がそのまま維持され、それがより一層多くの“変わった人”を呼び寄せることになるのです。

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