好調な経済指標にも関わらず、欧州財政懸念などから一気に信用収縮が進み大幅安清水洋介の「日々是相場」朝刊(1/2 ページ)

» 2010年05月07日 07時59分 公開
[清水洋介,リテラ・クレア証券]

<NYダウ>10520.32▼347.80

<NASDAQ>2319.64▼82.65

<為替:NY終値>90.59-90.65

好調な経済指標にも関わらず、欧州財政懸念などから一気に信用収縮が進み大幅安

 IMF(国際通貨基金)などの支援が期待されながらも依然としてギリシャ問題が燻り、ECB(欧州中央銀行)理事会後の会見で、ECBによるギリシャ国債購入が議論とならなかったことが明らかになり、全体の金融不安が募ってユーロが売られ、売り先行で始まりました。小売業の既存店売上高は好調と伝えられたのですが、リスク回避の動きが強まったところでシステム的な問題とされましたが、一時ダウ平均が1000ドル近く下落するなど未曾有の下げとなる場面もありました。ただ、すぐに買い戻しなども入り落ち着きましたが、ユーロが売られ、米国債利回りが低下すると今度はドルが売られて金や円が買われるなど、典型的なリスク回避の連鎖の動きは変わらず大幅下落となりました。

 米国企業の決算や経済指標は決して悪くはないのですが、欧州の金融不安の広がりが懸念されて信用収縮の動きが進んでいるものと思われます。業績相場への移行は進んでいると思われたのですが、住宅価格の回復が遅れているなど完全に業績相場に移行する環境が整う前に欧州での金融不安、米国での規制強化、中国の金融引き締めなどの懸念が噴出し、リスク許容度が低下、一気にリスク回避の動きとなったものと思われます。投機的な資金からいわゆる実需と言われるような資金に移行するのかどうかが今後注目されることになるのでしょう。

 個別には4月の米既存店売上高が予想に反して減少したギャップが大幅下落、逆に既存手売上高が予想に反して増加したメーシーズも地合いの悪さから大幅安となりました。悪材料には敏感な反応となり、一株損失が予想を上回ったアルカテル・ルーセントが大きく下落、財務省に追加支援を求めることを明らかにした米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)みお大幅安となりました。システム的な要因もあって一時20%以上の下落となっていたプロクター・アンド・ギャンブルやスリーエムなどは2〜3%安まで戻し、特に材料のない中で、バンク・オブ・アメリカやHP(ヒューレット・パッカード)なども大幅安となりました。好決算に反応するものもあり、シグナは大幅高となりました。

本日の相場

日経平均

 昨日の日本市場は連休中の海外市場が大幅下落となったことやその要因としての欧州金融不安、米国金融規制懸念、中国金融引き締め懸念を嫌気して、連休の谷間ということもあり、買い手控え気分も根強い中、見切売りなどが嵩んで大幅下落となりました。為替が円高、特に対ユーロで大きく円高となったことで、ハイテク銘柄の一角が大きく下落、中国での需要減退を懸念して機械株が安く、欧州金融不安かからの商品市況安を受けて商社株が安いなど信用収縮の動きでほぼ全面安となりました。

 米国市場が大幅下落となったことや為替が大きく円高に振れたことから、売り先行となりそうです。欧州金融不安は落ち着きを示しているものの解決するまでにはかなり紆余曲折が予想されるとの見方もあり、業績回復を織り込みながらも腰の引けたような買い方しか出てこない可能性もありそうです。頼みの業績回復も新興国を中心とした外需によるところが大きく、世界的な資金の収縮となると、回復度合いの鈍さも気になるものと思います。ただ、中国、インドなど新興国の経済拡大は続いており、底堅さは見られるものと思います。

 日経平均は節目と見られる10800円〜900円水準を割り込み、下値を探る展開となっています。節目としては10500円〜600円水準、昨年8月のもみ合い水準の下限=今年2月のもみ合い水準である、10100円〜200円といったところであり、2月の下落時のように瞬間的に10000円を割り込む場面はあっても、10000水準では底堅さも見られるものと思います。ただ、上値の戻りも鈍くなるものと思われ、いったんは10800円〜900円水準が上値となって来そうです。

本日の注目点

◇4月のマネタリーベース(日銀)

◇3月の家計消費状況調査(総務省)

◇4月の米雇用統計

◇3月の米消費者信用残高

◇3月期決算:東芝(6502)、パナソニック(6752)、IHI(7013)、富士重工(7270)、HOYA(7741)、バンダイナムコHD(7832)、伊藤忠(8001)、丸紅(8002)、三井物産(8031)、三菱商事(8058)、日本通運(9062)

◇1−3月期決算:キリンHD(2503)、ブリヂストン(5108)

◇1−3月期決算:英HSBC、英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド

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