欧州金融不安や米国金融規制懸念などで大幅安清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2010年05月25日 16時17分 公開
[清水洋介,リテラ・クレア証券]
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明日の相場雑感

 これまでの欧州の金融不安や金融規制懸念、米国の金融規制強化懸念、中国の金融引き締め懸念に加え、北朝鮮の懸念が強まり売り急ぐ展開となりました。「リスク」に対するコストがますます上昇したことで、一段と「リスク」を減らす動きとなり、大きな下落となったものと思います。ただ、北朝鮮の問題が取りざたされる前から見切売り、信用収縮の動きが大きく出ており、先週木曜日のときと同じように手仕舞い売りを急ぐという面と、株価=指数を下げることが目的であるかのような売りも見られました。

 前場は持高調整の売りがかさんで大きな下落となり、後場に入ると北朝鮮の問題が取りざたされてさらに売り急ぐような展開となりました。節目と見られる9500円を割り込んだところでも特に売り急がなければならない材料ということでもないにもかかわらず、いったんは下げ渋りも見られたものの、戻りの鈍さを確認するとすぐに売られてしまいました。信用収縮からの持高調整の売りが嵩んで指数を下押すことで、ますます株式を保有していることの恐怖感やリスクを減らそうという動きから売りが出て、ますます株価を下落させてリスクや恐怖感を広げているような感じです。

 株価の先行きに対しては過去の事例を当てはめてみることも多いのですが、今回の「暴落」も過去を振り返って見ると、今年の1月高値から2月までの下落や、昨年11月、10月、7月などの下落と同じような感じです。いずれも持高調整の売りと見られるような得に業績面、景気の面で懸念が出たわけでも、金利が変わったわけでもないなかで大きな下落となっている点では今回と同じようなことではないかと思います。こうした売りは2004年や2006年の4月から5月にかけての動きなどにも見られ、景気の落ち込みなどを懸念するというよりは持高調整のような需給要因が主な下げ要因となっています。

 今回の下落も欧州景気の減速から世界景気の減速などが懸念されてはいるものの、足元の景気動向は少なくとも日米、アジアでは落ち込みの兆しは見られず、欧州輸出企業の業績上振れすらも期待されています。したがって、信用収縮=リスク許容度の低下からの売りが悪循環となって大きな下落となっていますが、持高調整の売り、リスク許容度に見合ったリスク資産の売りが一巡となれば、特に買い材料がなくても底入れとなり、いったん底入れ感が出てくると業績面からの割安感などを見直す展開になってくるのではないかと思います。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券などを経て現在リテラ・クレア証券で相場情報などに携わっている。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。


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