普天間問題から財政再建まで――菅政権が抱える課題とは藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年06月14日 00時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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最難問は財政再建

 菅内閣が抱える最難問は、何と言っても財政再建だろう。今年度末で1000兆円に迫るような借金を抱えるような状況では、短期的にどうこうできる話ではない。現段階では2015年までに基礎的財政収支(毎年の政策経費を税収でまかなえるかどうかのバランス)の赤字を現在の半分程度とし、さらに2020年度までにこのプライマリーバランスを黒字にするというのが精一杯だろう。

 ただ具体的に消費税率の具体的な引き上げ幅や時期についてはまだ口を濁したままだ。民主党は基本的には消費税を引き上げるためには総選挙が必要という立場を取っているため、まだ具体的に語る段階ではないということなのだろう。

 しかし問題は投資家はそこまで悠長に待ってくれるのかどうかということだと思う。財政再建ということが世界的に言われ始め(というよりは市場からこの問題を突きつけられ)、欧州各国は緊縮財政に取り組みはじめた。この結果、ゼネストなどの労働争議が活発化し、経済に影響することも懸念されている。

 この先、いわゆる地中海クラブ4カ国(ギリシャ、ポルトガル、イタリア、スペイン)+アイルランドにハンガリーなど「財政危機」とされるような諸国がどう動くのか。そして英国やドイツといった欧州の中の大国がどう動くか。それによっては欧州の銀行経営が再び危機的状況に陥る可能性もある。米国のポール・クルーグマン教授は、自身のブログで、「流動性の罠」が解消されるまでは緊縮財政に移行すべきではないと論じているが、マーケットから借金にノーを突きつけられては、そうのんびりとしてもいられまい。

 一方、振り返ってみれば、日本という国は借金残高という意味では世界の先進国中最悪である。今年度末で973兆円という推計が財務相から出されているが、税収が見込みを下回りそうなので、さらに国債を増発し、借金残高が増えることを覚悟しなければならない。

 そういった状態でできることは、税制改革の方向性を確認することだろう。第一は消費税の引き上げ、第二は法人税の引き下げ、第三は租税特別措置の原則廃止、第四は所得税の累進税率カーブをもっと立てることである。

 かつてのような住民税と合わせると最高で90%以上の税率に戻せというつもりはないが、現在のような住民税と合わせて50%はいかにも低すぎるかもしれない。特に消費税という逆進性のある税金を引き上げようとするときは所得税の累進制を高めることが必要だと思う。最高税率がどれぐらいかという目安としてある自民党の議員は「住民税と合わせて70%ぐらいにしてもいいのではないか」と語っていた。米国の投資家ウォーレン・バフットは、「私たちはもっと税金を払える。だから累進税率を上げるべきだ」と語ったことがある。

 いずれにせよ、菅内閣にとってこの財政再建は相当の難題だと思うが、ここでどれだけリーダーシップを発揮できるだろうか。目先の政治的利益にこだわるようなことをすれば、国民は再び厳しい視線を民主党政権に向けるに違いないと思う。

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