米国のホワイトハウスのWebサイトを見ると、ギブス報道官の記者会見では、記者とのやりとり(それも冗談まで含めて)が公開されている。それに対して日本の内閣官房のWebサイトでは、官房長官の冒頭の発言部分だけが公開されており、記者との一問一答はない。つまりテレビなどで仙石官房長官の発言が取り上げられても、それがどのような流れの中で、どのように言ったのかを確認しようがないということだ。これでは政治の透明性の第一歩すら踏み出せていないと批判されても仕方があるまい。
さらに2009年11月から始まって「好評を博した」事業仕分け。あの「2位じゃダメなんですか」という蓮舫議員の発言であまりにも有名になったが、そこだけが切り取られることによる弊害も大きかったと思う。マスコミによってあの発言だけが大きく取り上げられたが、あの場の議論はもっと冷静で次元の高いものだったと参加者から弁護メールが来た。それはそうかもしれない。しかし事業仕分けでどのような議論がなされたのか、仕分けられる側はどのように自分たちの存在意義を説明できたのかを確認するすべは一般国民にはないのである。
事業仕分けはインターネットで生中継された。しかし考えてもみるがいい。生中継はそれでおしまいなのである。本来、じっくり議論を考えるのだったら、そこで行われた議論の速記録を公表すべきなのだ。それをしてこそ、国民はどこに問題があるのか、を理解することができる。
結果的に、あの事業仕分けは当初の鳴り物入りとは裏腹に、廃止や縮減による支出の節約も思ったほどできず、強制力をもたないことから官庁の側はさまざまな手を用いて生き残りを図るというあまり生産的ではない結論になってしまったように見える。
あるところで民主党へのがっかり度について話をしていたとき、こう反論された。物事は変えようと思ってもそう一足飛びには行かないものだ。もう少し待ってあげてはどうか。
確かに国のあり方や政治のあり方を変えるのはそう簡単ではないと思う。一挙にやるのは革命と同じであまりにも軋轢(あつれき)が大きすぎる。しかし、ここで取り上げた情報公開などはすぐにでもできるのである。もちろん人手はかかるだろうし、もう少し気の利いたサイトにしようと思ったらコストもかかるだろう。とはいえ、政権の座にある政治家が決断すればすぐにでもできることの1つだ。
オバマ大統領が、政権の透明性について決意を述べて動き出したのは、就任式の翌日であった。その決意表明にはこうある。「この政権を過去のどの政権よりも透明でクリーンなものにする」
さて菅総理はそのあたりをいったいどのように考えているのだろうか。
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