「◯△新聞に一面トップで抜かれているぞ、なにをやってたんだ!」
筆者が現役時代、未明にデスクに叩き起こされたことがあった。
当時筆者が追っていたのは、ある国際金融会議をめぐる日本側提案の中身だった。当然、毎日関係者の間を夜討ち・朝駆けし、日中も担当者にベタ張り。この日も深夜まで粘り、実務担当者から「まだ固まっていない。どこか書く社があれば、誤報だ」と太鼓判を押され、ヘトヘトになって帰宅した直後だった。
取材が甘かったのか、はたまた見落としていた要素があったのか。筆者は太鼓判を押してくれた信頼すべきネタ元に当たった。すると、答えがすぐに判明した。
「あのおじさん(幹部)が◯△社に夜回りされ、2日前の古い打ち合わせ資料を出してしまった。後追いすれば、世界中の笑い者になる」――。
筆者と担当デスクは追随しなかったが、◯△社が日本でも有数の経済メディアだったために、数社が全く同じ内容で後追いしたことを鮮明に記憶している。
このとき、駆け出しだった筆者が学んだのは、“新聞記者が来ると、手ぶらで帰らせない”サービス精神の旺盛な輩が少なからずいる、ということ。同時に、仮にこうした人物が政府や企業の幹部であっても、必ず裏を取ってから記事にするという基本動作の大切さだった。
また、こんなこともあった。某メガバンクを巡る取材が各社で過熱した際のこと。特定のメディアがスクープを連発した。当然、筆者を含めた数社がネタ元をあぶり出した。このメガバンクの場合も、ネタ元となった人物はサービス精神旺盛な人であり、夜回りを受けると喋ってしまうクセの持ち主だった。
しかし、筆者や競合他社はこのネタ元が漏らすネタに最終的に乗らなかった。というのも、ある日を境に、このネタ元に入る情報と、別のメガバンク幹部が持つ情報に微妙なズレが生じ始めたからなのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング