勝喜梅はこうした独創的な販売チャネル開拓を通じて、売り上げ構造を転換させることに成功した。
「現在、冠婚葬祭が30%弱。売店が13%。中元歳暮が13%。ホテル旅館が5%。そして、残りの40%弱が店舗通販です。地域別では関西が60%弱で、関東(東京・埼玉など)が30%弱です」
中元や歳暮に依存していた旧来の事業構造からの完全な脱皮である。それにしても、それまで誰も思いつかなかったような販売チャネル開拓を可能にした要因は何なのだろうか?
「ギフトを例にお話ししますと、私が常々言っているのは、ギフトにまつわる固定観念や既成概念をいったん外して発想するということ。もう1つはプレゼントする側、される側の両方の立場に立って考えること。
例えば、今、敬老の日ギフトを社内で考えさせているのですが、どうしても『おじいちゃんやおばあちゃんに何かをあげる』という発想になってしまうんですね。でも、敬老の日だからって、何でご老人方にプレゼントしないといけないということになるのでしょうか? まさに固定観念にとらわれてしまっているのです。
敬老の日におじいちゃんやおばあちゃんが、例えばいつもお世話になっているデイ・サービスの人に何かをプレゼントするとか、孫たちに何かをプレゼントするといった発想が出てきてもいいと思うんですよ」
なるほど、ショッピングやプレゼントというのは、いくつになっても楽しいものだし、普段、何かをしてもらうばかりになりがちなご老人たちが、「何をプレゼントしたら、ヘルパーさんや孫たちが喜んでくれるだろう?」と胸をおどらせて、あれやこれやと品定めするというのは、今までになかったすばらしい光景かもしれない。
しかし、固定観念や既成概念を外すというのは、決してたやすくないと思われるのだが……。
「それはもちろんそうだと思います。ですから、いったん梅から考えを外すように仕向けるんですよ。例えば『水を売るにはどうしたらよいか』というような、まったく関係のないテーマを与えて考えさせるんです。そうすることで思考の枠組みが広がるというか、頭の自由度が増すのです。
もう1つ言うならば、今の若い人たちはPCとにらめっこして新しいアイデアを出そうとしがちですが、それだけではダメだと思うんです。敬老の日のギフト企画を考えるのであれば、どんどん外に出て、いろんな立場のおじいちゃんやおばあちゃんの話を聞くべきだとは思いませんか? そういう現場の声を聞くことで初めて、プレゼントする側、される側の気持ちも少しずつ分かってくると思うんです」
「思考の枠組みの転換(=パラダイム・シフト)」、企業にとって永遠のテーマと言ってもいい「言うは易く、行うは難し」のこのテーマを実現し続けることが、同社の右肩上がりの成長を支えているということだ。勝喜梅の社内のこうしたダイナミズムを理解するために、私は「不変と革新」のコンセプトを活用すると分かりやすいと思う。
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