会社で違法コピー、その本当の恐ろしさとは?(2/2 ページ)

» 2010年07月30日 11時04分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
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違法コピーを放置するリスク

 日本の場合、海賊版ソフトウェアの販売数が少ないのに対し、企業や団体など組織内で違法コピーをしているケースが多い。組織内での違法コピーは摘発が難しいため、多くは内部告発により発覚することになる。

 上述の通り、違法コピーはソフトをインストールさせた人(教唆)も、実際にインストールした人(行為者)も処罰の対象になる。上司の命令でソフトを不正にインストールすることになった本人が、「この会社では違法コピーをしている」とBSAに通報することによって発覚するわけだ。

 不正コピーが発覚した場合、どうなるか。BSAは7月1日、ビジネスソフトウェアの著作権侵害に関し、関西にあるメーカーとBSAメンバー企業との間で総額3億1520万5272円の和解が成立したと発表した(参照リンク)。BSAへの通報がきっかけで発覚した事案としては、世界中で過去最高額である。

ビジネスソフトの著作権侵害に関する和解額ワースト10

 違法コピーが原因で民事裁判が起きた場合、損害賠償額も和解額も、違法コピー損害額をベースに決められる。違法コピー損害額をどのように算出するかというと、会社で使っているPCの中にどれくらい不正にソフトがインストールされているかを調べ、その数と年数、定価を掛け、さらにインストール時からの遅延損害金等を加算する。調査にあたっては、裁判官が告発された会社に出向き、社内のPCを開いてひとつひとつインストールされたソフトを確認する。たとえ使っていなくても、不正にインストールされたソフトがあれば、その本数に定価をかけたものが損害額となる。さらに、社員が多ければすべてのPCを確認できないため、裁判官が実際に調べたPCの中にインストールされていたのと同じだけ、ほかのPCにも違法コピーがインストールされているとみなしてかけ算をするという。仮に社内に100台PCがあるとして、まず告発があった部署の20台を調べて90%のPCに不正にインストールされていたとしたら、残りの80台も同じ90%とみなし、100台中90%のPCに不正インストールがあったとして損害額が算出されることになる。さらに、インストールしてから年が経てばその分もかけ算で損害額を計上する。こうした計算の結果、100人以下の規模の会社に1億円もの和解金が請求される、という事態が起こるのだ。

 BSAでは情報提供の窓口を設け、組織内違法コピーの情報提供を受け付けているが(参照リンク)、実際に告発をきっかけに摘発が行われた場合の結果は上述のようにあまりに大きい。仮に会社にうらみを持つ者が悪質な違法コピーの事実を知っていれば、それをBSAに通報するだけで、会社は訴えられ、多額な損害賠償金や和解金を支払わなくてはならなくなるのだ。違法コピーが行われている状態を会社が気付かず(あるいは黙認して)放置するリスクはあまりに大きい。

 もしあなたが社内で違法コピーをするように命じられたら、まずは社内のしかるべき部署に相談すべきだろう。会社も大きなリスクは負いたくないはずだ。

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