アップルのアンテナトラブルが問う「廃れないブランド」の条件(1/2 ページ)

» 2010年08月03日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」がある。


 日経新聞7月26日付「経営の視点」は、「『挑戦者=アップル』が崩れる日」と題して、iPhone4の受信トラブルが引き起こしているアップルのブランド危機について論じていた。

 米国では6月下旬に発売されたiPhone4は、電話機の持ち方によって電波の受信状態が悪化するというトラブルが確認され、「(アップルは)販売前から欠陥に気付いていたのに、それを消費者に開示しなかった」として、損害賠償や販売中止を求める訴訟が起きている。

 これに対して、同社のスティーブ・ジョブズCEOは会見を開き、「トラブルは多くのスマートフォンで起こる一般的な現象だ」、つまり「iPhone4に固有の問題ではない」と述べた。そして、問題を改善する1つの手段として、本体に装着するケースを購入者に無料で配布することも始めているが、何となく飽き足らない対応に感じられる。

 まったく別件の記事だが、同じく7月26日付の米WIRED誌の記事では「iPad所有者は利己的なエリート」と述べている。米国のリサーチ会社が、ある消費者意識調査の結果として出した声明らしいが、調査の信憑性は別として、「今、アップルのブランドに何が起こっているのか」は考察に値する。

 1976年の創業以来、アップルはIBMやマイクロソフト(エスタブリッシュメント)に対峙する「アンチ・エスタブリッシュメント」、大衆ではなく「非主流派」「革命家」「挑戦者」としてのブランド・イメージで売ってきた。

 つまり、かつてのアップルには、「少数派だからこそかっこいい」「エスタブリッシュメントに果敢に挑戦するからこそ応援したくなる」「(みんなが持っていないから)持っていると個性を表現できる」的要素があり、だからこそ熱烈なファンが存在したのだ。

 しかし、今やiPodは携帯音楽プレイヤーとしては主流中の主流だし、ご存じのようにアップルは今年になって時価総額でもマイクロソフトを抜き、世界最大のIT企業として君臨するに至ってしまった。

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