相手の逃げ道を用意する――スター社員の仕事術(1/2 ページ)

» 2010年09月24日 08時00分 公開
[今野誠一,INSIGHT NOW!]
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今野誠一(いまの・せいいち)

マングローブ社長。組織変革と、その担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。そのかたわら、経営者コミュニティサイト「MG-NET+(マグネットプラス)」編集長として経営者同士のネットワーク作りにも取り組んでいる。著書に『マングローブが教えてくれた働き方 ナチュラル経営のススメ』(ブルース・インターアクションズ)。


 人間は他人の過ちには敏感なのですが、自分の過ちは簡単に認めたくない性質があります。自分の過ちをなかなか素直に認めることができず、あれこれ言いわけし、格好を付けようとする姿勢がますます信頼を失っていくというもったいないことをしている人が多いと思います。

 このような態度は、結局は自分の度量を狭め、人間関係がスムーズにいかない、協力体制がとれない原因ともなっているのです。ミスをしたり、過ちを指摘されることは誰にでもあることで、仕事にはつきものです。そのことにどう向き合い、どう受け入れるかで、その人の度量が分かり、人からの評価も決まっていくのではないでしょうか。

 人からの指摘や、自分の弱さと向き合い、真摯(しんし)に行動している人には、協力者が自然に現れます。改善し、成長しようとする人に、周囲は協力を惜しみません。

 「善く泳ぐ者は溺る」ということわざがあります。人は自信を持ち過ぎると、しばしば得意とすることで失敗しやすいということですね。つまり、自分が不得意で、用心深く慎重に行動している場合は、ミスは起きにくく、むしろ自信を持って得意になっている場合に起きるのだという教えなのです。

 ここに大きな落とし穴が待っています。人は得意なことのほうがミスをしやすいものなのですが、得意なことで失敗した時ほど、それを認めることに抵抗があるものです。場合によっては、失敗そのものを「隠せるものなら、人に知られないで済ませたい」という心理状態になってしまうこともあります。自分の過ちを認め、誠意を持って謝ることはそれだけ難しいものです。

指摘を受け入れる

 問題を指摘された場合は、自分の成長のチャンスであり、さらには人間関係を良いものとできる最大のチャンスと考えるべきです。

 目的に向かって、うまく進んでいない時にこそ、お互いに指摘しあって、その指摘を素直に受け入れて改善に取り組む姿に人は信頼を感じ、チームワークができていきます。失敗に向き合って、ひたむきな努力を続けていれば、チームメンバーや周囲の人の協力を得て、必ず事態は好転しますし、成長する時が来ます。

相手も許す(逃げ場を作る)

 指摘された側が、心を強く持ってそれを受け入れ、次につながる動きをすることが大事なのと同じように、指摘した側にもそれを許す度量が必要です。「逃げ場が次の行動につながっていく」ということを覚えておいてください。

 どんなにその指摘が「正しいこと」であっても、逃げ場なく、完膚(かんぷ)なきまでに叩きのめされると、人は受け入れることができず、感情は憎しみに変わっていきます。悪いことに、人は親しければ親しいほど、過ちを見逃すことができずに、とことん追求し、逃げ場を作らずに攻め立ててしまうものです。

 自分に余裕ができれば、他人を許す気持ちも生まれますが、精神的にも体力的にも余裕のない時、多くの人はイライラして人に厳しくなるものです。

 素直に自分の過ちを認められる人は、たいていほかの人の過ちも許すことができる人が多いものです。そのような人に対して、周りは良い印象を持ちますが、逆に素直に過ちを認めない人に、人が不快感を覚えるのは、将来の自分の過ちも許してくれないだろう、という不安感が働くためなのです。

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