“死んだ”に等しい検察は、蘇ることができるのか相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年09月30日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

特別待遇を捨てよ

 「玄関のチャイムが鳴っている。おそらく記者だろう。検事宅への夜回りは禁止と知りながら、破れかぶれでぶつかってくる者もいる」――。

 これは横山秀夫氏の『半落ち』(講談社文庫)の一節、地検中堅検事の官舎でのワンシーンだ。

 捜査一課長や他の捜査幹部など警察官への夜回り取材は認められている。一方、検察官への夜討ち朝駆け取材は絶対的なタブーだとかつて同僚記者から聞いたことがある。名作でも触れられているように、検察は長い間マスコミから特別待遇を受けてきた。

 捜査情報や公判に関する重要情報が事前にマスコミに漏れてしまえば、容疑者や共犯者に証拠隠滅の機会を与える、あるいは新たな犯罪を幇助(ほうじょ)する恐れがあるというのが、検察が従来、特例としてマスコミに求めてきた方針だ。

 先に触れた通り、「特オチ」を過度に恐れるマスコミが取引に応じ、検察だけが「特別待遇」に長い事甘んじてきたわけだ。

 最高検を筆頭に、検察関係者は先の過激なブラ下がり取材の映像をどのように受け止めただろうか。視点を容疑者側にかえてみると分かりやすい。

 従前から検察はリークという手段を用い、これから逮捕するという人物の情報をマスコミに流してきた。ターゲットにされた側は、逮捕前から容疑者扱いされ、自宅や職場に多数の記者が押し掛ける。組織ぐるみの犯行との疑いが浮上すれば、上司や同僚までもが過激な取材攻勢にさらされるわけだ。検察当局は今まさしく、この立場に置かれている。

 だが、大阪地検の幹部が新幹線で上京した際、駅に降り立った瞬間から警視庁が護衛役となり、多数の警察官が取材陣と同地検幹部の間に割って入ったが、通常のケースではこんな護衛はつかない。この期に及んでも検察は特別扱いをされている。このことは筆者だけでなく、多くの国民がそう感じたのではないだろうか。

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