海外パケット定額制のインパクトについて、ロンドンで考えてみた神尾寿の時事日想・特別編(1/3 ページ)

» 2010年10月13日 11時20分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 先日、台湾の携帯電話メーカー HTC社の新製品発表会の取材で、ロンドンを訪れた。ここで発表されたHTC「Desire HD」と「Desire Z」の詳報は、姉妹誌のITmediaでレポートしたとおりだが(参照記事)、今回のロンドン出張でもう1つ、今後のモバイルビジネスで大きな可能性を感じたものがある。それが海外でもケータイ/スマートフォンのパケット料金が定額になる「海外パケット定額制」の存在だ。

 海外パケット定額制は、ソフトバンクモバイルが今年7月21日から「海外パケットし放題」として業界に先駆けて導入(参照記事)。それに追随して、最大手のNTTドコモも9月1日から「海外パケ・ホーダイ」を提供開始した(参照記事)。業界2位のKDDI(au)も2011年3月から「海外ダブル定額」を提供する予定だ(参照記事)

 こうした動きによって、海外でのメールやWebの利用がぐっと身近になったのは間違いない。海外パケット定額制にはどのようなインパクトがあるのか。筆者の体験も交えながら考えたい。

“当面は”1日1480円で使い放題

 本題に入る前に、ソフトバンクモバイルが始めた「海外パケットし放題」について改めて確認しておこう。

 このサービスはTwitter上でソフトバンクモバイル 代表取締役社長の孫正義氏がユーザーの求めに応じて導入を表明したもので、海外43の国・地域で、メールやWeb閲覧などパケット通信が定額制になるというものだ。定額制の上限料金は1日1980円(動画など利用時は2980円の予定)だが、2011年6月30日まではキャンペーン期間として1日1480円で利用できる。国内での定額制サービスに比べれば割高に見えるが、これまで海外でのパケット通信は上限なしの従量制で単価が高く、数万円~数十万円の請求が発生することも多々あった。それを思えば、1日1480円で使い放題というのは破格の安さだ。なにより定額制の安心感がある。

 一方、NTTドコモが開始した「海外パケ・ホーダイ」は、ソフトバンクモバイルを強く意識したものになっている。上限料金は1日1980円(20万パケットまで。それ以上は2980円が上限)だが、2011年3月31日までは1日1480円で利用できる。なお、対象となる国・地域は26カ所と、先行するソフトバンクモバイルよりも少ない。

 筆者は今回、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4」を片手にロンドンに渡り、海外パケットし放題を試した。といっても、特別な契約が必要なわけではない。ヒースロー空港で飛行機を降りたら、iPhoneの電源をONにするだけ。現地のキャリア(この場合はVodafon UK)の電波を掴むと、自動的に海外パケットし放題についてのSMSが送られてくる。あとはiPhoneの[設定]−[キャリア]で、海外パケットし放題キャリアの対象キャリア以外を使わないように設定し、[設定]−[一般]−[ネットワーク]から「データローミング」の項目を[オン]にすればいい。

 データローミングの設定をONにするとパケット通信が始まり、いつもどおりのiPhoneとしてメールやWeb閲覧ができるようになるが、ここで注意したいのが、パケットし放題が「1日1480円」の日割り計算である点だ。海外では時差があるため、この“1日”は日本時間の0時〜23時59分まででカウントされる。現地時間で日中でも、日本時間が夜の11時くらいだったりすると、わずか1時間ほどの利用でも1日分の利用料を取られてしまうのだ。飛行機を降りてメールチェックしたい気持ちをまずは抑えて、日本との時差を考えてから、いつデータローミングを始めるかを考えた方がいいだろう。

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