中国とロシアが、強硬な姿勢に変化した理由藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年11月08日 07時45分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

 中ロがより「強硬」な姿勢に変化したのは、いくつか理由があるだろう。1つはやはり普天間基地移設問題をめぐって日米の間がギクシャクしていることだ。鳩山前首相は「最低でも県外(移設)」と言い続け、挙げ句の果てに「沖縄に海兵隊が常駐することが安全保障上必要であることが分かった」として沖縄県内移設を決めた(というより、自民党政権時代の構想に戻った)。

 鳩山首相に期待をかけた沖縄県民がこれを受け入れるはずはない。県内移設容認派だった仲井間知事も、「もはや県内は無理」と言わざるをえず、辺野古沖移設は宙に浮いたままだ。鳩山首相の問題はこれだけではない。従属的ではない「対等な日米関係」にすると主張し、さらには「東アジア共同体」をぶち上げた。聞きようによっては米国排除論にも聞こえる不用意なこうした発言が、米国の神経を逆なでしたのは想像に難くない。

 さらに困ったことに、中ロがこの間隙を突いてくることを民主党政権は考えていなかったように見えることだ。漁船衝突事件で中国がどんどんハードルを上げていったとき、日本側はパニックになっていたかのようである。フジタの社員が拘束されると慌てて船長を処分保留のまま釈放してしまった。そして官邸はその決定に関与していないと言ってしまった。国内からの反発を恐れたからだろうが、外から見れば「下手の言い訳」にしか聞こえない。外交能力がないことを自ら白状したようなものである。

(出典:外務省)

民主党政権というリスク

 政治主導を唱える民主党だが、外交に関して政治家だけで取り仕切れるとは到底思えない。外交とは過去の経緯の上に成り立っている。言葉を換えれば、国と国との友好関係や敵対関係もそれなりの理由が存在するということだ。そして過去の経緯を承知しているのは外務省という役所なのである。もし外務官僚が考える政策のオプションが気に入らないとしても、それを変えた場合にどういうリスクが存在するかぐらいは考えておかなければなるまい。そしてそのリスクを引き受けることが政治主導なのだと思う。

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