20代の若者が、“心のキレイ”な人を食い物にしている吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年11月12日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]
社会起業に詳しい竹井善昭さん

 20代の職員の退職後についても、竹井さんは厳しい見方をする。

 「その後、民間企業で働こうとしても、初めのうちは戦力にならないだろう。なぜならNPOのときに、ビジネススキルを磨くようなことをしていないからだ。それはスキルやノウハウの力が“低い”のではなく、それらが“ない(ゼロ)”という状況に近いから。そもそも彼らに教える人がいないのだ。私が役所や企業の人と話すと『NPO職員とは商談がなかなかできない』といった声も聞く」

 このあたりの指摘は、私が見てきたいくつかのNPOの内情と同じである。2010年5月の時点で、全国のNPOの数が4万を超えたという報道があった。これだけの数がありながら、経営がうまくいっているといった声はあまり聞かない。その理由を特に世代間の意識という観点で、竹井さんに聞いてみた。

 「50〜60代で経営に関わる人は、“恵まれない人を救いたい”といった思いを持っている。ところが、そこから先のビジネスプランニングができていない。一方で、20代の一部には社会起業に漠然と憧れを感じて入ってくる者もいるが、学生のときから取り組むなど熱心な人が多い。本を読んだりして知識を獲得し、ビジネスとして考えていく思考は身に付けている。本来、20代の人たちの考えが理にかなっていて、50〜60代の人の考え方はいまの社会セクターの流れにまったく乗っていない」

若者が、若者を搾取する

 ここで私は思った。確かに世代間の意識の差はあるのだろう。だが取材をすると、若い層にも「心がきれい」とは言い難い人もいる。つまり20代〜30代で会社やNPOを「いずれ経営したい」と言っている人の中には、冒頭で述べた大学教授をはるかに上回る高慢さを兼ね備えた人がいるのだ。1カ月ほど前に会った20代後半の男性を紹介したい。

 「自分は、30歳前には会社やNPOを起業したい。いまの20代や10代は心がキレイなので、賃金が低くても文句はいわない。50〜60代などオールド世代はお金など低次元のものにしがみつくが、20代は自己実現の欲求など高次元のものを求める。だから若い人は地震があれば、そこに駆けつけボランティアに力を注ぐ。社会人になっても安い賃金で不満を言わずに働く。もし不満をいったら、辞めてもらう」

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