コンパクトだがドイツ人らしい合理的な設計が光るRollei 35。ひととおり問題点が解決できたので、さっそく撮影である。このカメラ、持ち歩くときはレンズを引っ込めることになるわけだが、そこには結構段取りがある。まず、シャッターをチャージしないといけない。次に軍艦部にあるポッチを押して、レンズをひねってロックを解除する。
すなわち折りたたんでいる状態は、必ずシャッターがチャージしてあることになる。撮影時はレンズを引っぱって、ちょっとひねってロックするだけで、すぐに撮影だ。フィルムカメラの場合、構図を決めてここだとシャッターを押したらチャージしてなくて空振り、ということがよくあるが、沈胴させるアクションにシャッターチャージをひも付けることで、このジレンマをなくそうとしたのだろう。
ただし、長期保管するときは、沈胴させておくとシャッターチャージしっぱなしになるので、伸ばした状態にすべきだろう。まだ作られて間もないころならバネも元気だっただろうが、もう40年前のカメラである。それなりにセオリーを変えていかないと、長く保たない。
レンズの最短撮影距離が90センチまでなのは、ちょっと残念である。この当時の標準はだいたい80センチぐらいなので、花などを撮るときは、もう一息寄りきれない。
しかし、その発色と描画力はすばらしく、F5.6〜8ぐらいまで絞ればカリッとした爽快な絵が撮れる。長年古いカメラを扱っていると、ネットでの情報からまあ写りはだいたいこんなもんだろうと予想ができるのだが、これは想像以上によく写るカメラだ。熱心なファンが多数いるRollei 35の実力を垣間見た思いである。
フィルムのカメラは、デジカメのようにやたらとパチパチ撮ったりしない。じっくりアングルを決めて露出、フォーカスを計り、1枚ずつ丁寧に撮影していく。これがハーフカメラならまだ気軽に撮れるのだが、35ミリフルサイズとなると慎重になるものだ。
Rollei 35は露出計の穴は、シャッターボタンに指をかけているとちょうどカメラをホールドした中指にかかる位置なので、正確に露出が計れない。撮影時にはなるべく手をフリーにして、露出を計る必要がある。後年はもう少し露出計の穴を真ん中に寄せたモデルもあることから、やはり当時からこの問題は指摘されていたのだろう。
シャッタースピードはレンズが暗いのであまり上げられないが、高速シャッターではレンジファインダー特有の「パッ!」という短いシャッター音が心地よい。一眼レフと違ってミラーの上げ下げがないので、まさに瞬間を切り取ったという感じがする。
40ミリという画角は、実際に撮影してみると意外に広く感じる。風景撮影ではかなりいい画角だろう。サイズがコンパクトなので、旅行を意識したということなのかもしれない。古いレンズのわりには逆光にも強く、白浮きすることもなく撮影できる。さすがライセンス製造とはいえど、Tessarである。
特に人間工学的でもない、シンメトリックで真四角なカメラだが、非常に保ちやすいし構えやすい。人間なんて案外何とかなっちゃうものだなぁ、ということを気付かせてくれる。ストラップホールが特殊形状のため、ストラップは専用のものを探す必要があるが、来年のCES出張のときにこいつを持って行って、1つアメリカを撮ってやろうと思っている。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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