湯浅誠が語る、広がる貧困と結婚できない人の関係(3/4 ページ)

» 2010年12月22日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

貧困問題は“刺身のつま”

「貧困問題を解決するために活動を続けている」という湯浅氏

 日本の政治はここ15年ほど、同じことばかり繰り返してきた。国民の生活を豊かにするために、企業を成長させ、経済を発展させようとしてきた。ずっとこのことを訴え続けてきたわけだが、振り返ってみると、経済は成長しなかった……。むしろ貧困が広がってしまった。

 そして「(自民党政権では)何もいいことはない」といった国民の不満が高まり、2009年に政権交代が起きた。しかし今の民主党政権は、ちょっとした方向喪失に陥ったと見ている。例えば民主党が掲げた「マニュフェストにこだわるか、こだわらないか」という議論になるときがある。そこで財源問題に集中してしまうので、党の方向性や理念といったものが弱まってしまった。

 そして自民党政権のときと同じように「とにかく企業を成長しないと。投資を増やして、輸出を増やして、経済を発展させないと」といった話に逆戻りしつつある。

 「貧困問題をなんとかしなければいけない」といったことに対し、誰も反対しない。しかし「貧困問題を解決することは大切なんだけど、そのためには企業を成長させなければいけない」という人が多い。つまり貧困問題は“刺身のつま”のような状態になっているのだ。

 結局、この貧困問題は後回しになっている。順番が回ってくるのであればいいのだが、これまで回ってこなかった。そして今後も回ってこないのではないか、と懸念している。私は評論家ではないので「2011年はこういう世の中になるだろう」と予測できないし、しても意味がない。ただ貧困問題がさらに悪化しないように「自分たちは何をすればいいのか」ということを考えなければいけない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.