トークショウには、SNSを運営する企業に就職が決まった、あるいは希望する学生3人も登壇。中村氏、夏野氏から起業の現場の様子を聞いていた。
学生1 個人的には、ザッカーバーグという人間は経営者というよりも生粋のエンジニア、職人みたいな人なのかなという印象を受けました。将来、自分もビジネスを起こしてみたいと思っていますが、実際のところを教えてください。
夏野 ザッカーバーグという人は、僕がiモードを作る前にやっていたものがあるんですけど、そのときの僕の心境に近いのかなと思います。どちらかというと目前にある面白いことにエキサイトして、それをどんどん作っていく。目の前でモノが動いていくっていうのが楽しい。
そのときは、途中までうまくいって、途中からダメになっていきました。そのときの疾走感と2回目の挑戦としてのドコモのiモードのときでは、ちょっと違うイメージを持ちましたね。
スタートアップの企業でゼロから新しいものを作る、あるいはまったく何もないところからオウンマネー、つまり自分たちのお金を突っ込んで、これがダメになったら生活が破綻しちゃうというところでやるパターンと、みなさんの中には自分では起業しないけれども(企業に属して)新しいサービスを作っていきたいと思う人もいると思います。僕はそれはどっちも問題ないと思っている。
起業家が偉くて、大企業に入る奴はリスクをとらないといわれるのは大嘘です。大企業に入れないから起業家をやっているってだけのヤツが、だいたい起業家の8割くらいいますが、こういう人は大企業にいたって大きな仕事はできないし、起業したって大きな仕事はできない。
一方で、起業するかもしれないし、あるいは大企業に入るかもしれないけど、とにかくでっかいことをやりたい、あるいはミッションとして何かを持っているという人。僕は起業家の中の2割ぐらいがこれだと思っている。
つまり、目先のお金よりも、あるいは六本木で遊ぶことよりも、モテモテになることよりも、何かもうちょっと世の中を良くしたいだとか、こういうことをやれば世の中が動くぞ、良くなるぞとか。世の中が良くなるというのが偽善のように感じるのならば、「みんながもっと楽しいといいじゃないか」と思う。
この映画にでてくるザッカーバーグというのは、両方持っていますよね。つまり、目先のめちゃくちゃ面白いことをワーッとやりたいというのと、こんなのあったらもっと面白いんじゃないっていうのと。これってハーバードの学生たちが使ったら楽しいよね、と。
夏野 何とか兄弟※っていうのは、ナンパのことをメインに考えていたけれど、ザッカーバーグはもうちょっと広い視野を持っていた。もともとクラブ制というものがあるので、ネット上で全部できるよね、それがあったらみんな喜ぶよねって。これって、次元が違うことだと思う。
僕がiモードを作ったときは、「せっかくNTTドコモという企業で新しい仕事をするんだから、このプラットフォームを使って、とにかく世の中にでっかくインパクトを与えるよ」と思っていました。auがどうとかKDDIがどうとか、当時のJ-Phoneがどうとか、そういうのはゴミみたいなものじゃないかと。それよりも生活を一変させるようなことをしたいよね、と。
そのためには、自分たちだけで囲い込むものもビジネスだから必要なんだけど、そうじゃないものも必要だよねということで、あるものはオープンに立ち上げたし、あるものはクローズドにしていた。
どっちかっていうと、みんなの生活に大きな変化を与えたいというモチベーションが主で、それがあまりにも強すぎたので、お金が全然手元に残らなかった(笑) 劇中で「Facebookの評価総額は250億ドル(2兆5000億円)」といっていましたけど、Facebookそのものは数百億円しか利益を出していないんですね。
中村 夏野さんはお金持ちになってないんですか?
夏野 なってないんだなあ。去年、ドコモのiモードは1兆5000億円くらい稼いだんですけど、1%もらえるようにしておけば良かったなあ、0.1%でも0.01%でもいいなあ(笑)
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