中村 Facebookのほかにも米国にはTwitterがあって、Googleがあって、Appleがあってと、これからもっと大きくなっていくんじゃないかと思っているものはありますか?
夏野 新しい会社、ということですか。僕はFacebookっていうのはすごく面白い例だなって思っています。FacebookはAPIが公開されるなど、かなりオープンに作られていて、そのプラットフォーム上でソーシャルアプリケーション系のサービスをしているZyngaという会社があります。
みなさんご存じかもしれませんが、Zyngaの方がFacebookよりも何倍も売上が大きいし、企業価値も高い。だけど、Zyngaは95%のユーザーをFacebookに依存している。
ビジネスとして考えると、(Facebookが)全部自分でやっちゃったほうがいいじゃんって思わないですか。ところが、そこをオープンにしているが故に、「Zyngaの勢いが弱まってきたとしても、ほかの企業が伸びてくればいいじゃない」と。
Facebookはプラットフォーマーなんだけど、旨みは全部上に乗っかっている人たちにとられているという矛盾構造。これが、Facebookが長生きしていくだろうなと思うポイントです。
中村 マネタイズという点についてはいかがですか? 映画の中でもお金のことでもめていましたけれども。
夏野 ZyngaがFacebookに依存しているのは、いつでもそのビジネスモデルを展開できるからです。Googleは、広告収入以外の部分でお金を稼ごうと思ってもうまくいかないことをしっているので、さまざまなサービスを次々と展開しているのは、広告を出稿してもらうためのシステムと割り切っている。こういう新しいものがバンバンでてくるというのが米国の強みかなと思う。
中村 日本からこういうのは出てきませんかね?
夏野 手前味噌ですが、けっこうマジでニコニコ動画はイケると思ってる。ニコ動ってのは、YouTubeとUstreamとTwitterを全部一緒にしたサービスなんです。でも日本から世界へ出て行こうと思うなら、お金と人材がきちんと供給されない限り、あるいはそれらを企業側がきちんと受け入れない限り、スピード感のあるビジネスについていけないでしょう。
中村 ソニーや任天堂が世界に出て行ったのに、なぜiモードは世界に出て行けなかったのでしょうか。
夏野 まず、iモードが世界に出て行くってことはあり得ないことです。なぜなら、NTTドコモという通信企業が作っているものだからです。それを、「何で世界に出て行けなかったのか?」と問う人は、そもそもの商売に関するカテゴリーを間違えている。
NTTドコモの最大の収入モデルは通信料なんですよ。通信料収入を世界から得ようと思うならばマジョリティ買収しかない。それを何でやらなかったのか、という質問であれば、そりゃあ、ねえ。
お金もあって技術もあったのだから、やるべきだったと思いますよ。でも、怖かったからやらなかったんです。だけど、iモードがなぜ世界展開しないのかという質問の答えは、「NTTドコモがドメインカンパニーだから」ですよ。端末を売るだけでは儲からないビジネスモデルなので、世界でそれをやってもしょうがないわけです。
中村 そのころ、多くの人はiモードが国内でこんなにドカンといくとは思っていなかったと思うんですが、夏野さんはどの段階でイケると思ったんでしょう?
夏野 僕は1997年ごろに「そうか、ケータイがあった」と思ったんですよ。iモードを作った当時、NTTドコモ社内にはiモードのようなものが成功すると思っていた人がいなくて、だからこそ勝手にやれた。
だいたい、端末名の「501i」の「i」って何で付いていると思います? 当時、僕はBMW 328iに乗っていて「iってかっこいいなあ」って。
中村 そんなので社内を通ったんですねえ。
夏野 いや、社内には説明してません。これはiモードのiですよ、って。
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