シンメトリー・ジャパン代表。米国系人事コンサルティングファーム、ワトソンワイアットで、成果主義人事制度の導入に尽力。欧州留学を経て、社会人向けMBAスクールのグロービスの立ち上げをリード。2006年、経営学の分野で有効性が実証された教育手法を使い、「情報の非対称性」を解消することをミッションとしてシンメトリー・ジャパンを立ち上げる。
お客さんや社内に向けたプレゼンテーションで、「何だか相手に伝わっていないなあ……」と感じる時ってありますよね? 反応が今イチ鈍かったり、ちゃんと説明したはずなのに質疑応答で改めて質問されたり……。結局、営業でクロージングできなかったり、社内で企画が通らなかったりと「失敗プレゼン」に終わってしまうわけです。
しかし、もしやり直す機会があるならば、「説明の順序」を見直してみてはいかがでしょうか。それだけのことで驚くほど相手が「分かった」と納得してくれるようになるものです。たった3点のポイントですが、大事なプレゼンを控えている人はチェックしてみてください。
1番目のポイントは「既知(known)から未知(unknown)へ」。
言われてみれば当たり前のことですが、知らないものを知らない言葉で説明されても分かるはずはありません。専門家であればあるほど、罠におちいりがちですけどね。
例えば、金融の専門家は一般的に説明がヘタなもの。
「個別の株と違って、投資信託は分散効果でリスクを下げることができるんです」なんて説明を平気でしてしまいがちですが、これを初心者が聞いても「?」とまったく理解不能でしょう。投資信託という未知のものを「分散効果」「リスクを下げる」という未知のもので説明していますからね。
では、どうしたらいいかというのが「既知(known)から未知(unknown)へ」。それぞれの頭文字を取って「KU接合」なんて言い方をしますが、要するにすでに聞き手が分かっているものを先に説明すると言うことです。
実例で見てみましょう。先ほど出した「投資信託」を例にとって、分かりやすい説明に直してみると……。
「投資信託って、サッカーチームと似ているんですよ。点取り屋ばかりいても勝てないでしょ? 投資信託だって、いろんな株が一緒になっているから強いんです」
サッカーチームという「既知」のものを使えば、投資信託という未知のものでも聞いている方も「分かった」と感じてくれるものです。
似たような話では「具体的(Concrete)なものから抽象的(Abstract)なものへ」と言うものもあります。
例えば、投資信託を説明するのに「そもそも、投資信託とはあ……」と抽象度の高いものから始めるのは、分かりにくい説明になりがち。
それよりも具体的なもの、例えば「日経225インデックスファンド」をまずは理解してもらいましょう。その上で、「日経225インデックスファンドみたいなものを『投資信託』って呼ぶんですよ。ほかにもいろいろあって……」と抽象化すると、「分かった」と思ってくれるものです。
賢く話そうと思うと、ついつい抽象から説明しがちですが、ベタな具体物から話し始めるのがコツです。
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