「ネットの中心で、『金をくれ』と叫ぶ」とナンボになるか?(1/2 ページ)

» 2011年02月01日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 先日、米国のコメディアン、クレイグ・ローウィンさんが、動画投稿サイトYouTubeで100万ドルをおねだりし、実際に100万ドルを獲得したと、世界中で話題になった。

Please Give Me One Million Dollars

 実は日本でも「金くれ」と叫んでいる人たちはたくさんいる。ネット乞食のための口座情報登録サイト「金くれ」は、2009年10月20日に「金くれは金が欲しい人が口座番号とメッセージを記載する、次世代ネット乞食プラットフォームです」と銘打って登場した。

口座情報登録サイト「金くれ」

 銀行口座情報を公開するというリスクを冒しながら、今でもたくさんの登録がされている。口座公開とともに「金をもらったらやること」というメッセージが併記されている。

 その中のほとんどは、「私は、小さいころから貧困の家庭で育ってきて、父親からの虐待やひどいいじめを経験してきました」といったの同情を買ってカンパを募るもの。そのほかには「生活費やパチンコなどではなく、夢実現の資金の一部として活用いたします。将来的には、この場所で同じように志を持っている人たちに還元していくことができればと考えています」という夢の資金調達を叫ぶもの。「働きたくない。2億円くれたら隠居します」なんて不届きなものから、「飯を食べたいので優しい人がいたら1万円恵んで下さい!!」という悲痛なものまで。

 全国に広がったタイガーマスク騒動に便乗して、「タイガーマスクになって、1人でも多くの施設にいる子どもたちに、ランドセルや文房具をプレゼントしたい!! そしていつか、世界の子どもたちの命を、1人でも多く救いたい!!」なんてものまである。

 この他力本願なサイトで果たしてナンボ集まるのか? その真偽は分からない。しかし、その目安となる面白い話(「銀行口座を公開した結果がこれだよ!!」)が、2010年末から正月にかけて流れていたのでご紹介する。

 Twitterでフォロワーを7000人強抱えるフリーライターが銀行口座公開の主であるのだが、その報告によると、銀行口座を公開して数日で「12月30日付までに計28人から総額21万4507円をお振込みいただいております。最小金額は1円、最高金額は5万円(2人)」とある。自分のTwitterでのつぶやき→実証実験で、20万円を超える金額を集めているのである。

 何度も繰り返したら問題にもなるし、こんな大金は集まらないだろうが……、ライターの貧窮を見かね、1回くらいなら酔狂に付き合ってみようという人たちが、ネット上にいることは違いない。最小金額1円を振り込む遊び感覚。会ったこともない人に5万円を振り込む伊達と酔狂。このあたりの感覚を共有できるセンスがあれば、「ネット乞食」は成立する時代なのかもしれない。

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