実例で話した方が分かりやすいので、次のような場面を想定してみました。舞台はある食品メーカー。この企業は健康食品の大手メーカーですが、会社を支えるもう1つの柱とも言うべきソフトドリンク事業は泣かず飛ばず。問題意識を持つ社員は、「クリーム・ウーロンソーダ」という革新的(?)な製品を企画しています。その企画に携わった木下君が、上司の柴田課長から厳しいフィードバックを受けているようですが……。
柴田課長 木下君、こないだのプレゼンは、妙に弱気だったじゃないか。あれじゃダメだよ。最初に「当社としてもこれまで取り組んだコトがない分野ですが……」なんて言わずに、ズバリと「これは売れます!」ぐらいのことを言った方が良いんだって。
木下君 はあ……、この人は分かってくれないよなー。
というのは、フィードバックのコンセントリック・モデルを理解してないのでダメ。むしろ……。
柴田課長 木下君、こないだのプレゼンでは、最初に「当社としてもこれまで取り組んだコトがない分野ですが……」なんて弱気だったじゃないか。あれは何を意図していたんだ?
と、意図を聞くところから始めましょう。これならば、
木下君 はい、あれは突飛な新商品を出す前に、まずは経営陣の共感を得たいと思って、彼らが心の中で思っていることを代弁したつもりだったんですが……。
なんて反応を引き出せるかもしれません。さあ、では木下君の反応に対して、どうフィードバックを返しますか? パターンはいくつかに分かれますよね。
まず、「意図」は正しくても「発言・行動」が間違っていると判断した場合。
柴田課長 そうか……。でも、経営陣の共感を得たいんなら、彼らが普段から一番期にしていることを題材にした方がいいぞ。例えば「業績アップに何らかの手を打たなければならない」とか。
木下君 あっ、そう言えばそうですね。
と、行動の修正をうながすことができそうです。
では、「経営陣の共感を得る」という意図自体が間違っている場合はどうすればいいか。
柴田課長 いや、今回の商品は、経営陣と妥協したらぜったいゴーサインは出ないって。むしろ、最初からケンカするつもりで行った方がうまくいくんじゃないか?
木下君 ははぁ、そんなもんですかねぇ。じゃあ、今度は……。
と、これまた建設的な議論になりそうですよね。もし木下君が「経営陣の共感を得ることが大事だ」というポイントにこだわったとしても、「なぜそう思うのか?」「その根拠は?」と続けていけば、最終的には合意にたどり着けそう。
フィードバックのコンセントリック・モデルは、ほかにも応用範囲が広いものですが、まずはこんなところから使い始めてみてはいかがでしょうか?(木田知廣)
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング