若者の内向き思考は本当!?――日本で働きますか、それとも地球で働きますか?郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年02月10日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

若者は内向き志向なのだろうか?

 だがよく見れば、日本人の若者も国際化に乗り遅れているとは思えない。

 まず、日本人海外留学者は劇的に減っているわけではない。文部科学省調査(参照リンク)によると、2004年のピーク時の8万3000人から2008年は約6万7000人と2割減。しかし、過去10年は6万人から8万人の間を行ったり来たりで、若年人口減を考慮すると、衝撃的な減少とは言えない。

日本人の海外留学者数推移(出典:文部科学省)

 また、文部科学省の海外在留児童数統計によると、海外の学校にいる子どもは2009年まで一貫して増加(約6万人)。帰国子女も毎年1万人以上いる。さらに“遊学”の労働ビザ「ワーキングホリデー」制度では、過去10年、毎年2万人を海外に送り出してきた(参照リンク)。この制度を使って海外へインターン就職する例もある。

 要するにトータル毎年10万人の「日本人の外国人枠」が増えている。統計から漏れる短期語学留学も含めれば、年間の大卒者60万人の2割以上に当たる人数が、毎年国際体験をしている。これを“内向き志向”とバッサリできるのか?

 もう一度、「新入社員のグローバル意識調査」を読み込むと、「どんな国・地域でも働きたい」は27%だが、「国・地域によっては働きたい」は24%なので、過半数は海外志向と言える。留学体験がある人で海外志向がある人は85%と、さらにその比率が高まっている。

新入社員のグローバル意識調査(出典:産業能率大学)

 若者=内向き説は疑問だらけ。作り上げられたイメージではないのか。

外国人枠は企業側の都合である

 米国有力大学の「日本からのMBA留学生推移」(アクシアム調べ)によると、私費・社費留学ともに減少傾向が見てとれる。米国留学が減ったのは企業の教育コストの削減、国際派社員を育成する余裕がなくなったからだ。さらに有能な社員をMBAに派遣しても、帰国後会社から“卒業”されてリターンがないと悟ったという裏事情がある。

 留学生を雇うのも、コストとリターンからの国際化というワケが透けて見える。「外国人=ローカライズしやすい=手っとり早い市場開拓」という安全運転志向だ。

 だが、歴史を振り返るとそれでいいのか? 1968年から2009年まで「日本人枠の日本人」が海外で踏ん張って、輸出主導で世界第2位のGDP(GNPが主流だった時代も含め)という地位を確保した。それを思い出してほしい。外国人枠で成長なんて、むしろ腰が入っていない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.