バナナから激安PB飲料水まで――自販機不況脱出のカギを考える郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年02月17日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷好文(ごうよしふみ)

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。他の連載は印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」、メルマガ「ビジスパ」で「ことばのデザイナーのマーケティングレシピ」。中小企業診断士。アンサー・コンサルティングLLPパートナー。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 自販機にロマンは戻ってきただろうか?

 「もはや100円でも売れない……自販機不況に活路はあるか?」というコラムで、自動販売機(自販機)の商品が売れない実情を書いてから1年数カ月。いまだデフレは続き、市中には80円、いや50円自販機さえ出現。どこまで続くのか安売り競争。だがそんな中、面白い自販機も出てきた。

 まずは2010年6月に登場した「バナナ自販機」。果実や野菜の生産・加工・流通大手であるドールが、渋谷の地下鉄構内と東京都稲城市若葉台に設置した自販機。バナナを1本130円、または1房390円で購入できる。バナナは自販機商品としては意外だが、よくよく考えるとナイフで切らずとも食べられる果物なので、実に自販機向きだ。食べやすいだけでなく、栄養価も高い。

 このマーケティングのポイントは、渋谷ではなく、むしろ稲城市若葉台のスポーツクラブNAS若葉台へ設置したことにある。プレスリリースを見ると、「スポーツジム、学校、オフィスなどへの展開を予定している」と書いてある。なるほど、そういう需要を狙ったか。

バナナ自販機(渋谷駅にて)

 2つ目は霞ケ関駅の「カットりんご自販機」。2011年1月中旬から登場したもので、青森産の皮付きまたは皮なしのカットりんご4〜5切れ(80グラム)入りが190円だ。

 りんごといえば、ビタミンCやミネラルが豊富なバランス食。その設置場所は「日比谷公園への出口」。公園でお弁当派のデザート需要を狙うというわけだ。こちらは青果物専門商社のエム・ヴイ・エム商事が仕掛けたものである。

カットりんご自販機(出典:エム・ヴイ・エム商事)

 面白いけれど首をひねったのは、JR東日本の「お勧め自販機」。自販機の前に立った人物の年代や性別を判断し(75%の精度)、属性に応じた商品を勧める機能が付いている。現在、東京駅や横浜駅などで稼働中。お勧めが強引な気がして私は好きになれないが、“ターゲティング”という点で感じることはあった。

お勧め自販機(出典:JR東日本)

 この3つをヒントにしつつ、自販機にロマンを取り戻すため、業界の殻を壊し、販売リスクを負ってはどうかという提案をしたい。まずは、現状のおさらい。

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