インタビュー
» 2011年02月18日 08時00分 UPDATE

嶋田淑之の「リーダーは眠らない」:創業1300年! 世界最古の温泉宿に行ってみた――慶雲館52代当主・深澤雄二氏(前編) (3/6)

[嶋田淑之,Business Media 誠]

今や絶滅危惧種とも言うべき、源泉かけ流しの温泉

 2004年に日本全国で発覚した温泉偽装事件。その発端となった白骨温泉の取材記事でも詳述したが、日本古来の伝統文化としての温泉は、今や絶滅危惧種と呼んで差し支えないほどの危機的状況に置かれている。

 町の銭湯でも毎日換水するのが当たり前であるが、日本の温泉宿の8割は、使用後の汚れたお湯を集めて、髪の毛や垢、脂や分泌物などをろ過して取り除き、大量の塩素を入れて大腸菌などの雑菌類を殺した上で、ボイラーで再度沸かして湯船に戻すという循環システムを採用している。

 温泉は生き物だ。このろ過循環システムを通すことで温泉は死に、本来の効能を期待することはできなくなる。それどころか、プールの水を沸かしたような塩素の湯に入ることで、肌は荒れ、体も疲労・老化することが指摘されている。

 そこまで分かっていながら、こうしたシステムを導入せざるを得なくなっている最大の理由は、温泉資源の枯渇である。戦後の高度経済成長期以降、日本全国に温泉ブームが沸き起こり、各温泉地では大型旅館や近代的なホテルの建設ラッシュが発生した。そしてそこに大型バスで社員旅行の団体客が続々と詰めかけるようになった。

 その結果として当然ながら、各温泉地の源泉湧出量は低減の一途をたどることになる。そこで、「いかにして、この事態に対応するか」ということから、多くの温泉地でろ過循環システムを採用することになったと言ってよいだろう。

 バブル経済崩壊により団体客需要は激減し、代わって個人客による「秘湯ブーム」が起きる。しかし、いったん大手旅行代理店の取り扱い商品になると、多数のお客さんが殺到する“秘湯”という名の人気観光地になる。浴槽の拡張工事などが行われ、その人数に対応しようとしても、そもそもそれだけの源泉湧出量がないケースも多い。そうなると、少ない源泉の有効活用ということで、ろ過循環システムが採用されることになるのである。

 こうして、日本全国の温泉地から、源泉かけ流しの湯が消えていった。今、残っているのは、全体の2割と言われる。

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 また、湧出する源泉が適温で出るとは限らないので、湯温調節の問題が出てくる。「熱交換システム」(白船グランドホテル取材記事参照)による間接的な調整なら源泉へのダメージも少ないのだが、設備投資にお金がかかるということで、水道水を注入して冷ましたり、ボイラーで沸かして適温に温めたりしているところが多い。

 さらには、湧出量に比べて利用客数が多い場合には、塩素を投入しているケースも多々ある。加水や加温、塩素注入によって温泉の力が弱まることは言うまでもない。

 そういう点まで考慮に入れるならば、温泉の本来の良さを堪能できる宿となると、2割どころか、5%もあるだろうかというレベルなのである。

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